euglena Project

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日本の空をバイオ燃料で
クリーンにせよ。

ユーグレナ社のバイオジェット燃料(SAF)での初フライト

2021.06 –

継続中

日本の空をクリーンにする
バイオジェット燃料の開発が本格スタート

2018年10月、日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントが横浜の京浜臨海部に誕生した。海外でのバイオ燃料の導入拡大が進む中、日本のカーボンニュートラルの実現へ貢献すべく、ユーグレナ社が取り組みはじめた。

横浜市鶴見区あるユーグレナ社のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラント

実証プラントでは、原料となる使用済み食用油や、微細藻類ユーグレナから抽出される油脂からバイオジェット燃料とバイオディーゼル燃料を製造する設備やタンクを設け、そこから出荷もできる設計となっている。

設立当初の予定では、2019年春から本格稼働を開始し、夏にはバイオディーゼル燃料の供給、さらに2020年にはバイオジェット燃料でのフライト実現を目指していた。

これまでの経験や知見を活かしたい
バイオ燃料開発へ一歩踏み出す

実証プラントの建設と並行し、燃料の開発や製造に詳しい人材を広く探していた。そして、実証プラントが完成する半年前にユーグレナ社に入社したのが、佐々木博充だ。

「もとは石油製品を精製・販売する石油の元売り会社に勤めていました。その中で、今後のエネルギーの利用方法のあり方について、考えさせられる場面が多くあったんです。石油を精製してエネルギーとして使用するその過程で、どうしても温室効果ガスが排出されてしまう。石油業界でも、原料や生産工程などを見直してはいましたが、抜本的な解決策はありませんでした」

そんな時に出会ったのがユーグレナ社だった。

「微細藻類ユーグレナの培養に二酸化炭素を活用したり、二酸化炭素の排出を削減するためのプロジェクトを行っていたりと、当時からユーグレナ社は先進的な取り組みをしていました。そんなユーグレナ社がバイオ燃料事業を始めるということを知り、自分も石油由来の燃料に替わるバイオ燃料の開発を実現したいという想いが湧いてきたのです。これまで培ってきた燃料の試験分析の知識や能力を、この会社でなら存分に発揮できると思いました」

また、勤務していた石油会社の上司だった森山が、実証プラントの工場長としてユーグレナ社へ転職したことも大きかったという。それまで特に面識はなかったが、知人のつてをたどってなんとか森山へたどり着くことができた。話を聞きにいくと、ちょうど燃料の分析員を募集しているところだった。
「これからはユーグレナ社で、自分の力を発揮しようと決心しました」と佐々木は振り返る。

期待を胸に飛び込むも、
トラブル続きで悪戦苦闘
計画が大幅に遅れる

しかし、スタートから早速トラブルに見舞われることになる。

「予定通り2019年の春に実証プラントを稼働させることはできました。当初は稼働後すぐに燃料がどんどん生産できると思っていたんです。ところが1回目の稼働で、ひとつ目の装置にトラブルが発生し、停止を余儀なくされました。その後、なんとか対処し2回目の稼働をしてみると、今度はふたつ目の装置が止まる。そんな感じで、全然うまくいきませんでした」

特に3回目の稼働では、これまでにない量のスライム状の閉塞物が蓄積され、燃料は一切出なかったという。

「一滴の燃料も出ないんです。原因もまったくわからず、本当に頭を抱えました」

そんな佐々木にさらに試練が重なる。
メンバーの立て続けての退職だ。

「来る日も来る日も、スライム状の閉塞物を装置から掻き出す作業が続きました。この実証プラントに集まったメンバーは、自分も含め、新たなバイオ燃料を開発し、サステナビリティに貢献することを目指して入ってきた志の高い人達ばかりでした。思い描いていた理想とは程遠い仕事が続いたことで、メンバーは次々に去っていきました」

しかし、佐々木は諦めなかった。残った仲間で、なんとか苦難を乗り越えようともがいた。

「まず、なぜスライム状のものが発生してしまうのか、海外のライセンサーに問い合わせし続けました。でも、海外のライセンサーでは同様の事例はなく、うち独自のトラブルでした。そうなるともう、社内の仲間でしか対処できません。毎日想定される原因をみんなで探って、これじゃないか、あれじゃないかと分析し続けました。研究の段階では問題なくできていたのに、いざ実用化しようとするとこんなにも大きな壁があるのかと思い知らされました」

少しずつ状況は改善しつつも、計画は大幅に遅れ、焦りと苛立ちが募る。そんなとき、佐々木は株主総会でのバイオ燃料事業部の担当を任された。株主に対して、ユーグレナ社のバイオ燃料の特長や事業の詳細について説明するのだ。

株主総会での激励に奮起
ついに悲願のバイオジェット燃料完成

「燃料はいったいいつ完成するのか?」
「プラントは稼働しているのに、なぜ生産できないのか?」
「こんな状態で、将来いくらで売るつもりなのか?」

2019年12月の株主総会で、佐々木は当然このような質問攻めに遭う。計画ではこの年の夏にバイオジェット燃料の供給が始まっているはずが、まだ燃料がまったくできていない状況で、佐々木は甘んじてこれらの指摘を受け入れた。

株主に説明をする佐々木

「ずっと『おっしゃる通りです』としか言えなかったですね…。応援してくださる方も多数いらっしゃったのですが、株主の皆さまからしたら、お前ら何やってるんだ、と思われて当然です。でも、この株主総会が自分にとってはターニングポイントでした。このままでは終われない、絶対にやりきってやると、この日に改めて決意しました」

佐々木は長くラグビーをやっていた生粋のスポーツマンだ。ラグビーで培われた負けず嫌いな性格が、ここで爆発する。

「株主総会で火がついて、今までやってきた仕事の倍以上の改善を行いました。これまでも毎日必死で取り組んでいたのですが、その倍以上やってやろうと。せっかく転職までしたのに『できませんでした』では終われません。他部署の仲間もたぶん心配だったと思うのですが、自分の耳にはネガティブな声は入ってきませんでした。むしろ応援してくれる人が多くて、それにもずいぶん支えられましたね」

メンバーの苦労が実り、まずは2020年4月にバイオディーゼル燃料が完成。そして遅れること1年後、2021年3月にバイオジェット燃料が完成した。
そして、いよいよ年内のフライト実現へ向けた準備が始まった。

ついに日本初の国産
バイオジェット燃料でのフライトを実現
2度目のフライトで喜びを実感

2021年6月、ついにユーグレナ社のバイオジェット燃料「サステオ」を用いた初フライトが実現した。バイオジェット燃料「サステオ」が給油されたのは国土交通省が保有し運用する飛行検査機で、政府機関の航空機において、国産のバイオジェット燃料が使用されるのはこれが日本初だった。

バイオ燃料給油後の飛行検査機

「初フライトの日は、普通にプラントで仕事をしていました。政府機関の航空機なので、情報が制限されていて、いつ飛ぶのか知らなかったんです。フライトの成功は会社のリリースで確認しました。だからなのか、プラントのみんなも意外とドライな反応で…(笑)」

これだけ苦労したのだから、仲間全員で抱き合って喜びを分かち合うのかと思いきや、佐々木を始めプラントメンバーは皆、落ち着いていたという。

初フライトの約3週間後、早速2機目のフライトが実現した。本当に喜びを実感するのは、この2機目のフライトの時だった。

「2機目のフライトは、最終品質チェックのために私も現場へ行きました。バイオジェット燃料「サステオ」を使用したプライベートジェット機が鹿児島空港から羽田空港へ向けて飛び立つのを見たとき、『ああ、よくここまで来たなぁ』と、喜びがふつふつ湧いてきましたね。私だけ鹿児島空港で、他のメンバーは羽田空港にいたのですが、彼らもすごく盛り上がったと聞きました。みんなでめちゃくちゃ写真撮ったりして」と佐々木は笑う。

2050年カーボンニュートラル実現へ向け、今やバイオ燃料の安定供給は避けて通れない課題だ。佐々木は今回のフライトの実現を経験し、近い将来にはバイオ燃料100%でのフライトも不可能ではないと考える。

「今は法律で定められているので、化石由来のジェット燃料にバイオ燃料を混ぜて使用していますが、バイオジェット燃料「サステオ」の性能からすると、100%使用でも飛行機は問題なく飛ばせると考えています。そのための研究を、今後どんどん進めていきたいです」

バイオ燃料「サステオ」の実証期間が終わり、これからは商業化のフェーズに入る。佐々木はこの先の展望をこう語る。

「燃料の製造は、人の命にかかわる責任重大な仕事です。燃料トラブルは本当に怖いもの。人の命にかかわるようなトラブルは、絶対に起きてはならないと常に自戒しています。幸い、バイオ燃料「サステオ」はプラントの運転の回数を重ねるごとに生産が安定してきています。品質管理が自分の仕事なので、今よりもっと安全でトラブルのない燃料として広めていきたい。それが私たちのサステナビリティだと思っています」

日本のバイオ燃料の普及には、彼らの仕事が不可欠になるだろう。バイオ燃料「サステオ」の商業化の道のりに、今後も注目していきたい。

2023年3月掲出

euglena Data

~ユーグレナ社のバイオ燃料での初フライト実現~

詳細はこちら

登場人物

エネルギーカンパニー
実証製造部
佐々木 博充

2018年4月に中途仲間として入社。
より安全な品質の燃料供給と子供たちの未来のために。常に最高品質の燃料供給を目標に日々の品質の管理と検証、品質の改善を行っていきます。

euglena Projects

vol.00

バングラデシュの子どもたちを
救う素材を探せ。

vol.01

誰もなし得ていない、ユーグレナの
屋外大量培養技術を確立せよ。

vol.02

ユーグレナを
300億円市場に育て上げよ。

vol.03

バングラデシュの
全ての小学校に給食を。

vol.04

煙突から排出されるCO2
ユーグレナを培養せよ。

vol.05

ユーグレナの化粧品事業を
立ち上げよ。

vol.06

日本初のバイオジェット燃料
製造プラントを建設せよ。

vol.07

「ミドリムシ」の名前を
武器にせよ。

vol.08

中国にユーグレナを
普及せよ。

vol.09

スーパーユーグレナを
獲得せよ。

vol.10

バングラデシュの
貧困問題を
緑豆事業で解決せよ。

vol.11

ユーグレナでタケダと
新商品を開発せよ。

vol.12

下水処理場の下水を活用し、
ユーグレナを培養せよ。

vol.13

ユーグレナの仲間の
「行動指針」を作成せよ。

vol.14

日本独自の技術で、
ユーグレナを培養せよ。

vol.15

仲間がより働きやすい
オフィスを追求せよ。

vol.16

ゆーぐりん保育園を
オフィスに併設せよ。

vol.17

ユーグレナで石垣島の
地域活性化に貢献せよ。

vol.18

ユーグレナの認知度を上げる
新商品を共同開発せよ

vol.19

ユーグレナのカフェを
石垣島で開店せよ。

vol.20

ユーグレナを飼料にして
比内地鶏を育成せよ。

vol.21

ユーグレナ入りディーゼル燃料を
いすゞ自動車と共同で実用化せよ。

vol.22

ユーグレナを使った
バイオ燃料を生産せよ。

vol.23

研究系ベンチャーを
ヒト、モノ、カネで支える
新しいファンドを確立せよ。

©2018 MELTIN MMI

vol.24

ユーグレナとクロレラで世界初の
ASC-MSC藻類認証を取得せよ。

vol.25

グループ企業との
シナジーを構築せよ。

vol.26

新しい仲間と、
遺伝子レベルで人を健康にせよ。

vol.27

自由が丘と
ユーグレナを普及せよ。

vol.28

ユーグレナサプリメントの
加工工場を立ち上げよ。

vol.29

理科のチカラで石垣島の
地域活性に貢献せよ。

vol.30

新しいユーグレナの
基幹化粧品を開発せよ。

vol.31

ロヒンギャ難民の
食料問題解決に貢献せよ。

vol.32

ユーグレナ由来の美容成分を
研究解明せよ。

vol.33

学生のチャレンジを応援!
通年採用を開始せよ。

vol.34

ユーグレナとクロレラで
ハラール認証を取得せよ。

vol.35

健康寿命を伸ばすユーグレナの
可能性を発見せよ。

vol.36

竹富島のクルマエビ養殖事業を
発展させよ。

vol.37

「G20軽井沢」にてユーグレナバイオディーゼル燃料で自動車を走らせよ。

vol.38

石垣島ユーグレナの魅力を伝えるキャラクターを企画せよ。

vol.39

CFO(最高未来責任者)を募集・選考せよ。

vol.40

国産カラハリスイカを
栽培せよ。

vol.41

日本初となる「バーチャルオンリー
株主総会」を開催せよ。

vol.42

次世代バイオディーゼル燃料を
普及させよ。

vol.43

コーポレート・
アイデンティティを刷新せよ。

vol.44

石垣島生まれの
ユーグレナを浸透させよ。

vol.45

ユーグレナ由来の
肥料研究を加速させよ。

vol.46

日本の空をバイオ燃料で
クリーンにせよ。

vol.47

オフィス環境を改善し、
仲間の生産性を向上させよ。

vol.48

化粧品における
サステナビリティを追求せよ

vol.49

次の新素材「ミドリ麹」の
価値を世に拡げよ。

vol.50

ユーグレナの
ESG経営を加速させよ

vol.51

未来世代アドバイザリーボードを
設置せよ。