研究内容
熱帯に豊富に存在する未利用バイオマスの価値を引き出すことを目的に、独自の培養技術・資源変換技術を活用した研究を進めています。特に、国内で最も多く発生するパーム残渣に着目し、その成分を利用した微細藻類の培養技術を開発することで、未利用資源を新たな付加価値へと転換する取り組みに注力しています。
パーム由来バイオマスは国土の広い範囲で生じ、未利用のまま廃棄されるケースが多く、これが温室効果ガス排出の一因となることが問題視されています。これらの残渣を微細藻類培養に利用することができれば、環境負荷の低減と新たな資源創出を同時に実現できる“アップサイクル”として期待されます。当研究所では、こうした未利用バイオマスから得られる成分を活かし、ユーグレナをはじめとする微細藻類の培養が可能であることを明らかにし、応用研究を加速しています。
さらに、将来的な大規模利用を見据え、食品・化粧品用途に加え、バイオ燃料など次世代産業への展開も視野に入れた技術開発を進めています。現地の大学や企業との共同研究を通じて先端技術を取り込みながら、資源循環型社会の実現に貢献する研究拠点として活動を拡大していきます。
所長メッセージ

ユーグレナ社は、“ユーグレナ”というユニークな微細藻類を軸に、日本No.1の藻類エネルギー企業として研究開発を進めてきました。
しかし、サステナブルな世界を目指すには、日本国内の資源・技術だけで達成できるものではありません。
マレーシアはメガダイバーシティ国家と呼ばれるほど、その国土に対して世界的に生物多様性の高い国で、日本にはない生物種・資源が豊富に存在しています。
マレーシアという土地に研究所を構え、マレーシア特有の「熱帯」気候と豊富な「バイオマス」を、今まで蓄積してきた知見・技術と組み合わせることで、多種多様な藻類・光合成生物によるバイオマス生産・利用研究を加速させ、世界に挑んでいくことができると考えています。
創業以来初となる海外の研究拠点として、国境を越えて人と地球を健康にしてきます。
熱帯バイオマス技術研究所
所長 稲葉 遊
研究事例紹介
パーム搾汁液を使用した微細藻類の培養
熱帯バイオマス技術研究所では、マレーシア現地に拠点を置く強みを活かし、パーム農園への継続的な訪問やその場でのサンプル回収を行い、未利用バイオマスが実際に微細藻類の培養に活用できるかを検証しています。これまで農園に放置され、廃棄物として扱われてきたパーム残渣を新たな資源としてとらえ、微細藻類を通じてバイオ燃料へと変換する技術の確立を目指しています。
- 研究内容
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パーム由来バイオマスは年間を通じて大量に発生し、放置された残渣はメタン発生や病害虫誘引など、環境負荷の大きい農業副産物として課題視されてきました。一方で、その化学組成には多糖類・有機酸・微量ミネラルなど、微細藻類の増殖に寄与し得る成分が含まれることが報告されています。当研究所では、この未利用バイオマスを“原料”と捉え直し、生化学的特性・培養適性・成分変動まで含めた体系的解析を進めています。
特に、パーム搾汁液については、炭素源としての有効性や培養阻害要因の特定を実施し、ユーグレナを含む複数種の微細藻類が従来培地と同等の成長性能を示すことを明らかにしてきました。
こうした研究を通じて、未利用バイオマスが単なる廃棄物ではなく、培地成分として利用可能な“資源”であることを示しつつあります。
これらの一連の研究は、微細藻類培養の原料コスト低減だけでなく、農園由来排出物の削減、温室効果ガス抑制、そして地域資源循環の構築に直結する取り組みです。現地大学・研究機関・企業との共同研究を通し、実証スケールでの評価やプロセス連携も進めながら、未利用バイオマスを起点とした新たなバイオマス利用技術の確立を目指しています。

