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2025.04.17

国産ゲノム編集技術CRISPR-Cas3を用いたユーグレナの品種改良に成功 
-ゲノム編集株をより迅速に産業利用することが可能に-

株式会社ユーグレナ
C4U株式会社

 株式会社ユーグレナ(本社:東京都、代表取締役社長:出雲 充、以下「ユーグレナ社」)およびC4U株式会社(本社:大阪府、代表取締役:平井 昭光、以下「C4U社」)は、2023年5月より、「ユーグレナにおけるCRISPR-Cas3法でのゲノム編集技術応用」に関する共同研究を実施してまいりました。この度、本研究の成果として、CRISPR-Cas3法を用いたユーグレナのゲノム編集に成功したことをお知らせします。 これにより、ユーグレナのゲノム編集株をより迅速に産業利用へと展開することが可能となりました。

■研究の背景と目的
 これまで、ユーグレナのゲノム編集には、海外で確立されたゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9およびCRISPR-Cpf1が使用されてきました。しかし、これらの技術の基本特許を巡る特許紛争により、真の特許権者が不明確となっており、不透明な特許料や許諾条件が生産株の実用化の障害となっています。この点において、権利関係が明確な他のゲノム編集技術を利用することで、その許諾条件が明確となり、製品化への道筋が整えられることが期待されます。
 数あるゲノム編集技術の中でも、特にC4U社が再実施権付独占許諾権を有するCRISPR-Cas3法は、CRISPR-Cas9法と類似した技術的特徴を持ちながら(図1)、ビジネス面も考え併せユーグレナにおいて機能する可能性が高いと考えられました。
 本研究では、ユーグレナに対してCRISPR-Cas3法を用いたゲノム編集を2つの遺伝子に適用し、この手法が汎用的に利用可能であることの実証を目的としました。

図1 CRISPR-Cas9法とCRISPR-Cas3法の違い

■研究の内容
 CRISPR-Cas3法によるゲノム編集において、作製した株の機能性食品(タンパク質の高含有化など)としての利用を想定し、破壊対象遺伝子として、パラミロン注1)合成に関与するGSL2遺伝子を選択しました。また、作製した株の機能性食品(パラミロンの高含有化など)や化成品(パラミロン誘導体など)としての活用を想定し、破壊対象遺伝子として、ワックスエステル注2)合成に関与するPNO遺伝子も加えて選択しました(図2)。

図2 本検討で破壊した遺伝子とそれらが関与する代謝の流れ

 GSL2遺伝子の破壊処理を行った集団から、パラミロン粒が見られない細胞を選別・単離し、株として樹立しました。この結果、対象とした遺伝子領域においてPCR法注3)によるDNA塩基配列の欠失が検出され(図3)、CRISPR-Cas3法がユーグレナに対するゲノム編集に適用可能であることが実証されました。

図3 GSL2遺伝子破壊によるパラミロン粒が観察されない株の作出

 また、PNO遺伝子を破壊処理した集団からも、対象遺伝子領域においてPCR法で欠失が検出される細胞を探索した結果、PNO遺伝子において大きな欠失が存在する2株の変異体を選抜することに成功しました(図4)。

図4 PNO遺伝子破壊株の作出

 さらに、PNO変異体のうち1株について、脂質蓄積に関する性質を調べた結果、低酸素条件での蛍光色素染色では、脂質を蓄積するものの、野生株と比較して蓄積量が少ない様子が観察されました(図5左)。また、実際に脂質を抽出・定量したところ、野生株と比較して有意に脂質蓄積量が少ないことが確認されました(図5右)。

図5 作製したPNO遺伝子破壊株のワックスエステル合成に関する性質

 以上の結果から、ユーグレナのゲノム編集において、国産ゲノム編集技術であるCRISPR-Cas3法が利用可能であることを実証しました。また、将来的に利用可能な株として、CRISPR-Cas3法を用いて以下の2種類の品種改良株を作製することに成功しました。 

  1. GSL2破壊株:重量あたりの含有率が高いパラミロンを生成せず、代わりにタンパク質など栄養素の含有率が高い株。パラミロンは、免疫賦活や睡眠の質改善など、様々な食品機能性を発揮する有用成分ではあるが、タンパク質や他の栄養素の量が優先して期待される場面では、GSL2破壊株によってそれらの含有率を増やすことが可能となります。
  2. PNO破壊株:食品利用時、人間が消化することのできないワックスエステルをゲノム編集前の株よりも生産しない株。

 ゲノム編集を用いて作製される品種改良株は、バイオ燃料の原料や肥料などの非食品用途だけでなく、飼料や食品用途にも安全に活用できます。CRISPR-Cas9法およびCRISPR-Cas3法では、ゲノム編集の過程で配列認識用のRNA注4)が細胞に導入されますが、このRNAは数日で分解されるため、残存核酸がないことを確認することで遺伝子組換え体ではないものとして扱うことが可能です。残存核酸がないことを確認された株は、古典的な手法による品種改良株と区別できない株となります。 

 ユーグレナ社では、実証した技術を利用して、食品用途も含めた様々な用途のユーグレナ品種改良株を作製し、早期実用化に向けて研究開発や製品化を加速してまいります。またC4U社は、共同研究を通じてこのような先進的な取り組みを実施し、CRISPR-Cas3法によるゲノム編集技術の様々な分野での活用を促進してまいります。 

注1)パラミロン 
パラミロンは、ユーグレナ(ミドリムシ)が持つ特徴的な貯蔵多糖であり、β-1,3-グルカンの結晶です。食品利用する際に、免疫賦活や睡眠の質改善など、様々な機能性を発揮します。 

注2)ワックスエステル 
ワックスエステルは、脂肪酸と脂肪族アルコールがエステル結合した化合物であり、ユーグレナは低酸素環境下に長時間おかれるとワックスエステルを細胞内で合成します。食品用途では、消化吸収の特性上、過剰摂取による影響が懸念される一方、ユーグレナの生産するワックスエステルは、燃料原料として期待されています。 

注3)PCR法 
ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction, PCR)は、特定のDNA配列を増幅する分子生物学的手法です。DNA配列の欠失や変異の検出に用いることができます。 

注4)RNA 
RNA(リボ核酸)は、DNA(デオキシリボ核酸)と同様に遺伝情報を持つ分子であり、タンパク質合成に関与します。DNAが細胞内で遺伝情報を保存するのに対し、RNAは一般的に短期間で分解されるため、細胞内に長期間残りません。CRISPR-Casシステムにおいては、特定のDNA配列を認識し、切断するために使用されるガイドRNA(gRNA)として利用されます。 

※ユーグレナ社が発表済のユーグレナのゲノム編集に関するリリース
2019年6月17日「ミドリムシでの高効率ゲノム編集に成功」 https://www.euglena.jp/news/20190617-2/
2022年9月9日「ゲノム編集で遊泳不全ミドリムシの作出に成功」 https://www.euglena.jp/news/20220909-2/
2023年1月30日「ユーグレナの眼点をつかさどる色素を同定 」https://www.euglena.jp/news/20230130-2/  
2024年2月1日「微細藻類ユーグレナのゲノム編集技術を拡張 」https://www.euglena.jp/news/20240201-2-2/

<株式会社ユーグレナについて>
2005年に世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養技術の確立に成功。「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」をユーグレナ・フィロソフィーと定義し、微細藻類ユーグレナ、クロレラなどを活用した食品、化粧品等の開発・販売、バイオ燃料の製造開発、遺伝子解析サービスの提供、未利用資源等を活用したサステナブルアグリテック領域などの事業を展開。2014年より、バングラデシュの子どもたちに豊富な栄養素を持つユーグレナクッキーを届ける「ユーグレナGENKIプログラム」を、継続的に実施している。https://euglena.jp

<C4U株式会社について>
新規ゲノム編集技術CRISPR-Cas3を用いて、遺伝性疾患を始めとする様々な疾患に対する新規の治療法等の開発を自社及び他社との提携により推進すると同時に、幅広い産業への応用に向けたプラットフォーム展開に取り組む、大阪大学発バイオベンチャー。
CRISPR-Cas3技術は、現在までにオフターゲット変異は認められておらず高い安全性が期待できることや、ターゲット遺伝子とその周辺を広く削ることができるといった特徴を有し、現在世界中で研究が先行しているCRISPR-Cas9の複雑な特許状況に影響されない、これに対抗し得る有望なゲノム編集技術として注目を浴びている。https://www.crispr4u.jp/

ー報道関係者お問合せ先ー

株式会社ユーグレナ 広報担当:西田、畑
TEL: 03-3453-4907 press@euglena.jp

C4U株式会社 管理部
TEL: 06-6369-7180 info@crispr4u.com

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