euglena Project

36

竹富島の
クルマエビ養殖事業を
発展させよ。

「クルマエビ自動選別機」を導入

2015.04 –

継続中

有人島には稀有な国内屈指の自然環境で育つ、
極上のクルマエビ

「もともと、竹富島はクルマエビ養殖のための好条件がそろっている。クルマエビが効率よく餌を食べてくれる25℃以上34℃未満の海水温を年中保てるし、飛行機で1時間あれば那覇空港へ、そこから1日の間に全国へ届けられる立地だから」

ユーグレナ竹富エビ養殖株式会社でクルマエビ養殖の陣頭指揮を執る場長の笠井誠人はそう話す。

自然豊かな沖縄の離島の中でも、竹富島は特に恵まれた環境だという。竹富島には商業農地や川がない。年間約3000ミリの雨が降る南西諸島では農地に撒かれた農薬や赤土がすぐに海へ流れ込んでしまう恐れがあるが、そもそも商業農地がない竹富島では、害虫駆除のために農薬をあまり使用しないのだ。同時に、竹富島には国内最南端の下水処理場があり、下水処理も完備されているため、生活排水が直接海に流れ込むこともない。

日本近海で最もピュアだといえる海水と、最高品質の餌によって育てられるクルマエビ。その甘味は極上で、2020年の幕開けに行われた東京・豊洲市場の初競りでも評判となった。

「以前いた久米島と比べても、エビが本当によく育つよ」

笠井のキャリアはクルマエビに捧げられたといっても過言ではない。大学で生物学を学び、卒業後はさまざまな水産現場で、飼料会社とともにクルマエビの飼料開発の研究を進めた。原料調達のために世界中を視察して回った経験もある。久米島に立ち上げられたクルマエビ養殖場に約30年勤めた後は、海外の水産現場をコンサルティングした。

そんな笠井が竹富エビ養殖から声を掛けられたのは2015年のこと。同社がユーグレナグループに参画した年でもある。

このとき、同社は存亡の危機に立たされていた。

出荷準備をする笠井

自転車操業を脱却して残る課題
「労働生産性と労働環境」を改善していくために

豊かな自然と海に囲まれた沖縄県竹富島。この離島の町で、竹富エビ養殖は1986年に創業した。

観光地としては一定のブランドを得ていても、島での就労機会は決して多いとはいえない。働く場所を求めて沖縄本島や内地を目指す若者は後を絶たなかった。島での就労場所として、地場産業の維持につなげたい――。そんな思いで立ち上げられたのが竹富エビ養殖という会社だったのだ。

笠井はそのストーリーに心を動かされた。「これは自分の最後の仕事になるかもしれない」。そんな決意とともに2015年に入社した。

しかし当時の竹富エビ養殖は、会社の存続すらも危ぶまれる状況だったという。従業員は社長以外に1人だけ。創業時の思いとは裏腹に恒常的な人材不足に悩まされ、非効率な作業を余儀なくされていた。

「技術や地場産業の維持を考える前に、まずはそれまでの場当たり的な経営を何とかしないと。やるべきことはたくさんあった」

取引先との条件を改善し、それまでの人脈を生かして新たな販路を開拓。ようやく利益確保の目処をつけた笠井が次に目を向けたのは、労働生産性や労働環境の改善だった。

2年目、3年目と徐々に人は増えていったが、労働生産性が高まる兆しはない。

生きたクルマエビを、航空機のフライト時間に合わせて大量に選別し、梱包するのは至難の業だ。エンドユーザーの多くは板前やコックといった「プロ」であり、そうした顧客は「それぞれの料理に適したサイズの高品質な活クルマエビを仕入れたい」と考えている。その期待に応えるためには、今日水揚げしたクルマエビを直ぐに選別・出荷し、翌日の市場に並ぶようにしなければならない。

夜行性のクルマエビは、深夜から夜明けまでが水揚げの勝負。年間で250万尾にもおよぶ大量の選別と出荷は、入社して日が浅い従業員にとっては想像を超える作業だったに違いない。

どうにかして、この大変な作業を減らせないだろうか。

目をつけたのは、「甘海老の選別を船上で行える機械」を開発しているというあるメーカーだった。甘海老の業界も人手不足で、導入した機械が生産性向上に大きく寄与していると聞いた。それなら、クルマエビにも応用できるのではないか。

課題は大規模な設備投資に向けた予算確保だった。その鍵を握る味方は、意外なところから現れることになる。東京のユーグレナ社から出向してきた井上志保里。親子のように年の離れた味方だった。

「そんな数字にとらわれていたってどうにもなりませんよ!」
竹富島の現場へ入ってからの決意

大学時代には海洋の酸性化がサンゴ礁に与える影響を研究していた井上。ユーグレナ社に就職したのは、アカデミアの領域で世界を理解するだけでなく、実際に世界を変える一員になりたいと考えたからだった。

大学院時代にサンゴ礁の研究に従事する井上(右)

世界を変える仕事をするために経営戦略部への配属を希望した。その直後に、ユーグレナ社は竹富エビ養殖のグループ入りを発表。このときから遠く離れた竹富島の竹富エビ養殖と井上の関係がスタートしたのだった。

しかし直面したのは、「遠隔では何も変えられない」という現実だったという。

「竹富エビ養殖がユーグレナグループの一員となってからも、労働力不足の課題は解決できていなかった。求人を手配するなど採用活動を行うものの、現場のことを知らない私がメッセージを出しても効果的だとは思えなかった」

竹富島へ行こう。

出向を決意したのは「私自身もこの会社のストーリーが好きだったから」だと井上は振り返る。

竹富エビ養殖では、まず自分自身が現場を理解するために、現場のメンバーとともに養殖場の掃除や出荷、餌やりなどを担当した。

「とにかく現場の人たちから学ばせてもらう毎日。笠井さんをはじめとして、『生き物に対してこんなにも熱中できるんだ』と心から尊敬できる人たちばかりだった。採用活動では、そこで見聞きしたことを率直に発信していった」

人よりもエビを中心にして動かなければならず、予測不能な変数に満ちあふれた現場。それは東京オフィスとはまったく異なる文脈で動く世界だった。計画や予算は大切だが、それにとらわれすぎると現場は回らない。竹富島へ来てからの井上は、東京のメンバーと衝突することもしばしばだったと打ち明ける。

「働き方改革が必要だといっても規則だけで現場を変えられるわけではないし、管理する側の都合で作られた数字に合わせようとしても無理がある。『そんな数字にとらわれていたってどうにもなりませんよ!』と電話越しに叫んだこともあった」

私も、この状況を変える原動力の一つにならなければいけない。井上の腹は決まった。

ユーグレナグループの一員となった2015年頃の様子
(右から4番目が笠井、井上が撮影)

補助金採択に向けた申請業務と、日本最長の出張
同じ目標を追いかけた2人の尽力

労働環境の改善に向けたポイントは、笠井が提案する「クルマエビ専用自動選別機の導入」にあると思われた。課題となる予算確保をどうクリアするか。そこで着手したのが、内閣府沖縄総合事務局が公募する「平成31年度沖縄国際物流拠点活用推進事業補助金」の活用に向けた挑戦だった。

竹富島の地場産業であるクルマエビ養殖に付加価値を持たせ、さらに発展させるための計画。そして事業拡大に向けた思い。それらを申請書に落とし込んでいく作業もまた苦労の連続だったという。

「今日は申請書を書くので現場を抜けますね、すみません」

メンバーへ声をかけ、気遣いながら現場の仕事と申請業務を両立していく井上。一方の笠井も、実現に向けて労を惜しまなかった。

「クルマエビを養殖しているのは世界でも日本だけ。国内には約50の事業者があるが、自動選別機を導入しようとしているのは我々だけだった。そうした意味では世界初の試みで、何事も自分の目で見てみないと気が済まなかった」

自動選別機が活用されている現場を見るために、笠井は北海道の北西部にある増毛町にも足を運んだという。「竹富島から増毛町まで行くなんて、日本最長の出張じゃないかな」と笠井は笑顔で振り返る。

北海道増毛町への出張(右から2番目が笠井)

導入に踏み切る決意をしたのは、「人間の1/3のスピードで選別できる」という話を聞き、その実態を目の当たりにしたからだ。

「熟練のスタッフがクルマエビを選別する場合は、サイズだけでなく鮮度も見分けることができる。機械の場合は単純にサイズしか選別できないので、もう一度人間の手をかけて鮮度を見ることになるが、それを補ってもあまりある効果が期待できる」

選別作業の時間を短縮し、労働生産性を高め、労働環境を変える。この会社に来て以来の悲願がようやく実現しようとしていた。

そして2019年6月14日、ユーグレナ竹富エビ養殖は補助金の交付採択を受けることが決まった。自動選別機の導入によりこれまでよりも早いスピードで高品質のクルマエビを選別し、商品価値をより高めていくことができ、現場で働くメンバーの負担を軽減することにつながった。

自動選別機の活用により労働生産性が向上

都市部水準の給与も払えるようになるはず
地元で、全国で、クルマエビの価値を再認識してもらいたい

こうして、34年にわたり続けられてきた竹富島のエビ養殖事業を次世代へとつなぐ目処が立つようになった。

「次の課題は、機械が壊れたときにどうするかということ。熟練スタッフの技能はまだ伝承されていない。生き物に対する、マニュアル化できない感覚をどう伝えていくか。そのためにも竹富島に腰を落ち着けて、長く働いてくれる人を集めなければいけない」

笠井はそう話す。地元には「民宿の手伝いをしてのんびり働きたい」という若者はいても、
「朝の4時から起きてクルマエビのために働きたい」という若者はなかなかいない。

「ただ、今の生産性から考えれば、都市部水準の給与も払えるようになるはず。全国からこの事業に魅力を感じて集まってもらえるようにしたいね」

まだまだ小さい会社だからこそ、チャレンジできることもたくさんある。

「将来的には、地元の方にも竹富島のクルマエビの価値を再認識してほしい。今は島の小中学校の子どもたちがいつでも自由に見学できるようにしている。そんな機会を通じて、クルマエビに思いを馳せてもらえれば」

そんな笠井の言葉を受けて、井上も未来への思いを語る。

「少しずつ島の子どもたちにも興味を持ってもらえる環境になりつつあるので、より愛される場所にしていきたい。笠井さんのようにアカデミックな知見を持っている人もいるので、『共同研究をする』イメージで出入りする人が増えると面白いのでは」

ユーグレナ竹富エビ養殖の挑戦は続いていく。

2020年1月掲出

euglena Data

~ユーグレナ竹富エビ養殖のクルマエビ~

竹富島の綺麗な海水を使用し、
東京ドーム1.5倍の敷地面積でのびのび育てられている

登場人物

ユーグレナ竹富エビ養殖株式会社
取締役場長
笠井誠人

2015年4月より竹富エビ養殖株式会社(当時)場長就任、2015年9月に同社がユーグレナグループに参画、ユーグレナ竹富エビ養殖株式会社に社名変更。養殖から販売まで監督する傍ら、現在は後継者の育成に力を入れている。

「会社の危機を支えた仲間がいたうえで、この事業に興味を持った元気で優秀な若手が全国から来てくれた。新しいことに挑戦していける基盤ができたことがとても嬉しい」

euglena Projects

vol.00

バングラデシュの子どもたちを
救う素材を探せ。

vol.01

誰もなし得ていない、ミドリムシの
屋外大量培養技術を確立せよ。

vol.02

ミドリムシを
300億円市場に育て上げよ。

vol.03

バングラデシュの
全ての小学校に給食を。

vol.04

煙突から排出されるCO2
ミドリムシを培養せよ。

vol.05

ミドリムシの化粧品事業を
立ち上げよ。

vol.06

日本初のバイオジェット燃料
製造プラントを建設せよ。

vol.07

「ミドリムシ」の名前を
武器にせよ。

vol.08

中国にミドリムシを
普及せよ。

vol.09

スーパーユーグレナを
獲得せよ。

vol.10

バングラデシュの
貧困問題を
緑豆事業で解決せよ。

vol.11

ミドリムシでタケダと
新商品を開発せよ。

vol.12

下水処理場の下水を活用し、
ミドリムシを培養せよ。

vol.13

ユーグレナの仲間の
「行動指針」を作成せよ。

vol.14

日本独自の技術で、
ミドリムシを培養せよ。

vol.15

仲間がより働きやすい
オフィスを追求せよ。

vol.16

ゆーぐりん保育園を
オフィスに併設せよ。

vol.17

ミドリムシで石垣島の
地域活性化に貢献せよ。

vol.18

ミドリムシの認知度を上げる
新商品を共同開発せよ

vol.19

ミドリムシのカフェを
石垣島で開店せよ。

vol.20

ミドリムシを飼料にして
比内地鶏を育成せよ。

vol.21

ミドリムシ入りディーゼル燃料を
いすゞ自動車と共同で実用化せよ。

vol.22

ミドリムシを使った
バイオ燃料を生産せよ。

vol.23

研究系ベンチャーを
ヒト、モノ、カネで支える
新しいファンドを確立せよ。

©2018 MELTIN MMI

vol.24

ミドリムシとクロレラで世界初の
ASC-MSC藻類認証を取得せよ。

vol.25

グループ企業との
シナジーを構築せよ。

vol.26

新しい仲間と、
遺伝子レベルで人を健康にせよ。

vol.27

自由が丘と
ミドリムシを普及せよ。

vol.28

ミドリムシサプリメントの
加工工場を立ち上げよ。

vol.29

理科のチカラで石垣島の
地域活性に貢献せよ。

vol.30

新しいミドリムシの
基幹化粧品を開発せよ。

vol.31

ロヒンギャ難民の
食料問題解決に貢献せよ。

vol.32

ミドリムシ由来の美容成分を
研究解明せよ。

vol.33

学生のチャレンジを応援!
通年採用を開始せよ。

vol.34

ミドリムシとクロレラで
ハラール認証を取得せよ。

vol.35

健康寿命を伸ばすミドリムシの
可能性を発見せよ。

vol.36

竹富島のクルマエビ養殖事業を
発展させよ。

vol.37

「G20軽井沢」にてユーグレナバイオディーゼル燃料で自動車を走らせよ。

vol.38

石垣島ユーグレナの魅力を伝えるキャラクターを企画せよ。

vol.39

CFO(最高未来責任者)を募集・選考せよ。