株式会社ユーグレナおよび euglena GG Ltd. (以下「グラミンユーグレナ」) が、バングラデシュで展開してきた栄養支援活動「ユーグレナGENKIプログラム(以下、GENKIプログラム)」。2014年の開始以降、政治不安や社会環境の変化にさらされながらも活動は途切れることなく続けられ、2025年10月時点で累計配布数は2,140万食を突破。現在は毎日約9,000人の子どもたちに「ユーグレナクッキー」を届けています。
このGENKIプログラムが、開始から11年目という節目に、初めて「インパクト評価レポート」を公表しました。これまで発信してきた定性的なエピソード(GENKIレポート)ではなく、子どもたちの健康指数や出席率などのデータを通じて、GENKIプログラムがもたらした変化を可視化する試みです。
なぜ今、評価を行ったのか。GENKIプログラムは何を目指してきたのか。そして、その先にどのような未来を描いているのか。今回のプロジェクトを率いる経営戦略部 IR Co-Lead/サステナビリティディレクター兼グラミンユーグレナ取締役の宮澤に話を伺いました。
11年かけて築いてきた、GENKIプログラムの信頼と広がり
―まず、「GENKIプログラム」とはどのような取り組みなのか、改めて教えてください。
宮澤:GENKIプログラムは、バングラデシュの貧困地域に暮らす子どもたちに、栄養豊富なユーグレナ入りクッキーを継続的に配布する取り組みです。2014年に提携校5校・約2,000人への支援からスタートし、現地のNGOや企業と連携しながら、活動を拡大しています。クッキーの配布にとどまらず、食育や衛生教育にも取り組み、子どもたちが健康に成長していくための土台そのものを支えることを目指しています。
また、GENKIプログラムは、創業者の出雲が掲げてきた「社会課題の解決と事業成長の両立」という思想を体現する取り組みでもあります。一般的なCSRとは異なり、商品を購入していただくほど支援が広がる仕組みになっており、その成果を今回のインパクト評価レポートで初めて定量的に示しました。

―GENKIプログラム自体も、かなり広がってきていますよね。
宮澤:そうですね。現在は提携校が89校まで増え、累計配布数は2,000万食を超えています。いまは毎日、約9,000人の子どもたちにユーグレナ入りクッキーを届けています。
こうした数の広がりは、現地で長年にわたり築いてきた信頼関係が、確実に根づいてきた結果だと感じています。現地の学校の先生やNGOの方々が「このプログラムは良い」と、別の学校に紹介してくださるケースも増えてきました。
子どもたちが元気になり、エネルギッシュになっているという実感が口コミのように広がり、次の展開につながっています。
こうした連鎖は、短期的なプロジェクトではなかなか生まれません。
現地のグラミンユーグレナのメンバーが、保護者や先生と日々対話を重ね、想いや目的を丁寧に共有し続けてきた。その積み重ねが、11年という時間を経て、いま形になっているのだと感じています。

―GENKIプログラムは2014年の開始から10年以上経ちました。いまなお子どもたちへの支援が必要とされる背景について、どのように捉えていますか。
宮澤:GENKIプログラムを開始した2014年以降、バングラデシュの5歳未満児の栄養状態には、一定の改善が見られています。たとえば、当時は微量栄養素の摂取状況が特に悪かった子どもたちの中でも、約20%は健康状態が改善したというデータもあります。
一方で、裏を返せば大きな母集団の中で、いまなお約20%の子どもたちが深刻な課題を抱えているのも事実です。具体的には、貧血や亜鉛欠乏といった微量栄養素不足が依然として多くの子どもたちに見られます。
バングラデシュは今後、低所得国から中所得国へと経済発展していくと考えられていますが、その過程で懸念されるのが、貧富の差の拡大です。経済指標が改善する一方で、恩恵を受けにくい層――とりわけスラム街に暮らす人々は、取り残されやすくなっていきます。
社長の出雲がよく「Make a small early success in the hardest field(一番手の届かない場所で小さな成功を生む)」という言葉を使いますが、私たちはまさに、最も手が届きにくい場所にこそ、健康の土台となる栄養を届け続けることが重要だと考えています。
短期的な成果だけでなく、根本的な健康課題に向き合い続ける。そのためにも、支援を継続していく意義は、いまも変わらず大きいと思っています。

数字と現場が示した確かな変化―11年目の答え合わせ、初のインパクト評価
―今回、インパクト評価レポートを初めて公表した背景を教えてください。
宮澤:GENKIプログラムが開始から10年を迎え、11年目に入ったことを一つの節目として、今回レポートを取りまとめました。
これまで多くの方に支えられて継続してきた取り組みが、実際にどのような変化を生み、社会課題の解決にどうつながっているのか。私たち自身の説明責任として、可視化したいという思いが背景にありました。
これまでも、支援先の子どもたちの声など定性的なエピソードは「GENKIレポート」として発信してきましたが、子どもたちの健康状態や学習環境にどのような変化があったのかを、定量的に整理・評価したのは今回が初めてです。

※インパクト評価レポート参考
・2025年12月16日リリース「ユーグレナ、バングラデシュ「GENKIプログラム」 インパクト評価レポートを初公表」:https://www.euglena.jp/news/20251216-1/
・インパクト評価レポート概要:https://www.euglena.jp/genki/pdf/evaluation_result.pdf
・インパクト評価レポート詳細レポート:https://www.euglena.jp/genki/pdf/evaluation_report.pdf
宮澤:調査では、GENKI プログラムに参加する子ども200人と、参加していない子ども200 人を対象に、ユーリア社と共同開発した「栄養コンディションチェッカー」による尿検査や、身長・体重・握力測定、症状アンケートなどを用いた定量的・定性的な測定を実施しました。2024年2月〜2025年3月までの1年間、計3回実施しています。
過去にも効果測定を試みた時期はありましたが、血液検査に対する現地の抵抗感などから継続的な実施には至りませんでした。今回の取り組みは、10年続けてきたからこそ、現地メンバーや学校との信頼関係が築かれ、「やりきる」という共通のコミットメントが生まれたからこそ実現したと感じています。仮に結果が想定どおりでなかったとしても、それは次の改善につながる重要なヒントになる——そうした認識をメンバー全員で共有し、節目のタイミングであえて開示する決断をしました。

―レポートの結果で、特に印象に残った点は。
宮澤:定量的な結果で最も意外だったのは、出席率の向上です。一定の効果は想定していましたが、欠席率が大きく改善し、明確な数値として示されたことには驚きました。また、亜鉛など微量栄養素の摂取による体調面の改善、倦怠感や活力低下への影響など、健康のベースが底上げされている傾向が確認できたことも、会社としても大きな手応えでした。
また、これまで日本でも確認されてきた「便通の改善」や「活力の向上」といった微細藻類ユーグレナの健康に関するエビデンスが、国や環境も全く異なるバングラデシュでも同様に確認できました。この事実は、ユーグレナの持つ可能性の高さを改めて証明することにもなりました。

宮澤:同日に強く印象に残ったのは、データだけでは語りきれない「現場で感じた変化」です。
事前にGENKIレポートを通じて、子どもたちがユーグレナクッキーを楽しみにしていることは把握していましたが、GENKIプログラムを実施している学校と、そうでない学校を訪問すると、その差は一目で分かりました。子どもたちの目の輝きや行動から、明らかに活力が違うと感じ、「数値には表れきらない効果も確実にある」と実感しました。
学校の先生や保護者へのインタビューを通じて、栄養だけでなく、手洗いなどの衛生習慣が根づいていること、そしてプログラムへの信頼が地域に蓄積されていることも強く感じました。
日頃から現地メンバーが真摯に対話を重ね、課題があれば改善を続けてきた。その積み重ねが、こうした結果につながっているのだと思います。

―調査を進める中で、困難も多かったのではないでしょうか。
宮澤:本当に多くの困難がありました。中でも最も大きかったのは、現地の政変です。予定していた調査が実施できず、何度もスケジュールを組み直し、学校との調整を重ねる必要がありました。オフィスの目の前でデモが起こり、活動が1か月近く停止したこともあります。結果として、調査を実施できなかった学校や、通学を続けられなくなった子どもたちもいました。それでも、現地メンバーが粘り強く調整してくれたおかげで、最終的には3回目の調査を実施することができました。
政情不安の中で、「この活動をなぜ続けるのか」というチームの目的意識が改めて問われた期間だったと感じています。結果が良くても悪くても、それは次のGENKIプログラムへの重要なヒントになる。11年目の節目だからこそ、逃げずに開示しようと決めました。現地メンバーの調整力とコミットメントには、心から感謝しています。

評価結果を力に、次の100万人へGENKIプログラムが描く、広がりと未来への循環
―このインパクト評価を、今後どのように活かしていきたいですか。
宮澤:今回の評価結果を、活動をさらに広げていく上での大きな強みとして活かしていきたいと考えています。
創業者の出雲が掲げる「毎日100万人に栄養を届ける」という夢を実現するためには、より多くの子どもたちへリーチを広げていく必要があります。その一つが、学校給食への展開です。
バングラデシュでは、公的な給食制度に組み込まれるために、教育省やベンダーへの採用が不可欠です。その際に、科学的・定量的な裏付けを持つこのレポートは重要な突破口になると考えています。
また、現地に拠点を置く多国籍企業のCSRプログラムや、工場で働く工員向けの給食など、既存の枠組み以外にも広がりの可能性が見えてきています。「効果がある」という説明ができることで、新たなパートナーシップや用途別のカスタマイズも進めやすくなります。
子ども向けに始まった取り組みを、将来的には大人の栄養課題にも応用しながら、リーチを広げていく。その積み重ねが、やがて事業成長や、将来のお客さま・取引先・協力パートナーといった、次世代のステークホルダーにつながっていくと考えています。決して善意で終わらせない。それがGENKIプログラムの真髄です。

―最後に、GENKIプログラムを支えてきた方たちへメッセージをお願いします。
宮澤:これまで10年以上にわたりGENKIプログラムを支えてくださった皆さまには、心から感謝しています。
今回のインパクト評価レポートを通じて、皆さま一人ひとりが商品を購入してくださるという意思決定そのものが、確実に子どもたちの健康や未来につながっていることを示すことができました。
私たちは、最も支援が行き届きにくい「ハーデストフィールド」にあえて挑み、そこでやり切ることに意義があると考えています。
バングラデシュの子どもたちが健康に育ち将来、日本やユーグレナ社と新たな関係を築いていく可能性も含めて、未来への投資であると考えています。その世界を信じ、応援してくださることが、結果として私たち自身の成長にもつながっていく。そうした循環を、これからも皆さまと一緒につくっていきたいと思っています。ぜひ皆さまにはその姿勢とエネルギーを、引き続き応援していただけたら嬉しいです。

<プロフィール>
宮澤 郁穂(みやざわ いくほ)
株式会社ユーグレナ 経営戦略部 IR Co-Lead/サステナビリティディレクター兼グラミンユーグレナ取締役。
大手衣料品グローバルメーカーのサステナビリティ担当を経て、2023年1月に中途仲間として入社。ESG経営を推進し、社会インパクトの可視化による企業価値の底上げに取り組む。
バングラデシュのこれからの「健康」を循環させていくための大きな一歩となる「インパクト評価レポート」。その完成までの道のりは、決して簡単な道のりではありませんでした。
ユーグレナの公式ファンコミュニティ「ユーグレナ・エアポート」では、試行錯誤を繰り返し、ようやくお届けすることができた評価レポートの舞台裏を、本プロジェクトに関わった3名のメンバーが、全4回にわたって詳しく語っています。
本記事ではお伝えしきれなかったインタビューは、下記よりご覧いただけます。
【ユーグレナ・ジャーニー】バングラデシュ事業編 第1話 『ユーグレナGENKIプログラム』継続11年の答え合わせに挑む
