家事手伝いのために学校に行けない子どもたちへ届ける教育
出張授業について
【2022年8月の活動報告】

バングラデシュでは、家事手伝いなど生活のために日中働き、学校に行けない子どもたちがいます。そんな子どもたちのために、出張授業を実施しているGENKIプログラム提携校を紹介します。

1.出張授業とは

今回ご紹介する提携校は、ダッカから車で北東におおよそ6時間離れたシルヘット県にあります。同県は紅茶の産地として知られています。

同県で見られる紅茶畑

GENKIプログラム提携校は同県に4校あり、英国の慈善団体の寄付により、合計180人の子どもたちが無償で授業を受けています。大半の子どもたちは、経済的な理由や家庭の事情から手伝いをしたり働いたりしながら勉強をしています。
バングラデシュでは、14歳未満の子どもたちに労働を強いることは違法とされています。しかしながら、実際には約320万人もの14歳未満の子どもたちが、家事手伝いや危険な労働を強いられているという報告があります※1

※1 UKBET programs for working children

同校を運営するNGO団体UKBET(UK Bangladesh Education Trust)は、このような状況を踏まえ、「バングラデシュで児童労働をなくすこと」を信条としています。寄付金の一部は、この目的を達成するためにも活用されています。
家計が厳しく、働かざるを得ない環境に置かれている子どもたちは、学校に行くことが難しく、そのため教育を受ける機会を失ってしまいます。そこで、同団体では2019年1月から、新たに出張授業をスタートさせました。
出張授業では、教師が子どもたちの家に訪れ、直接授業を行います。同団体では、このような環境下に置かれている子ども達の中で、特に勉強したいという意思を持つ女の子を対象にしています。現在は、約100人の女の子たちが出張授業を受けています。

出張授業を受けるミンハちゃん10歳(左)とルジナちゃん14歳(右)

出張授業では、4校合わせて計12名の教師が、それぞれエリア別に子どもたちを担当しています。例えば、ある教師は朝9時から、2軒の家に訪問し、それぞれ1時間半の授業を実施しています。 1人ずつの子どもたちの家に訪問するのは効率的ではないため、なるべく同じ出張授業を受けている近所の子どもたちに1つの家に集まってもらい、3,4人の子どもたちに同時にベンガル語などを教えています。
アンジョナちゃんも、出張授業を受けている子どもの一人です。現在14歳で、母親、弟、妹と4人で、学校から約2km離れた場所で生活しています。家がある場所は、収入が少ない貧困層の家族が住むエリアです。

弟(左)、アンジョナちゃん(中央後ろ)、妹(手前)、母親(右)

父親は別居しているため、母親は女手一つで3人の子どもたちを育てています。
母親は家事手伝いの仕事をしており、月収は約11,000円、家賃が約5,500円です。その残りのお金で家族4人を養うことは非常に難しい状況です。
アンジョナちゃんは、妹の世話や母親の手伝いをするだけでなく、近所の裕福な家でトイレやお風呂の床を掃除したり、料理をしたりして、月に約2,700円をもらって、生活費の足しにしています。

トイレ・お風呂を掃除するアンジョナちゃん
料理の下ごしらえをするアンジョナちゃん

昨年、同団体の現場職員が、アンジョナちゃんの家に訪問しました。そこで、職員は、アンジョナちゃんが勉強をしたくてもできない状況に置かれていることを知りました。出張授業について母親に説明したところ、「家事手伝いをしながら、費用をかけずに自宅で勉強ができるなら」と賛同を得て、アンジョナちゃんは2022年の1月から、出張授業を受け始めました。
毎週4日間、教師が家まで来て、勉強を教えてくれます。午前10時から11時半までの1時間半、授業を受け、その後、家事手伝いをします。
アンジョナちゃんは学校に行けないため、家が学校になります。本来学校で食べるはずのユーグレナクッキーも、出張授業を受ける子どもたちは、特例として、教師が訪問時に家まで届けています。

出張授業を受ける近所の子どもたちがアンジョナちゃん(右)の家に集まり、勉強をしている様子

現在は、ベンガル語、算数、英語を勉強しています。アンジョナちゃんは、こう話してくれました。
「勉強を始めたのは遅かったかもしれないけれど、今こうして、先生に勉強を教えてもらえることが嬉しい。出張授業がなかったら学ぶことができなかったかもしれないので、とても感謝しています。みんなは学校に行って勉強すると思うけれど、私は先生が家にきてくれる。少し変わった方法だと思うけれど、質問もたくさんできるし、近くに同じように勉強している友達がいるから頑張ろうと思えます。」

ベンガル語を教えるブシャラ先生(左)と、勉強するアンジョナちゃん(右)

アンジョナちゃんに勉強を教えているブシャラ先生は、
「アンジョナちゃんはとても熱心に勉強していて、宿題もきちんと期日までにやってきます。私は出張授業趣旨に賛同し、昨年から働き始め、彼女を担当するようになりました。教育を届けることは、彼女たちの将来にとって、とても重要なことだと思います。学ぶことを楽しみながら、日々勉強に励む彼女を、今後も応援していきたいです。」と語ってくれました。

GENKIプログラムではアンジョナちゃんのような子どもたちも支援しています。

2.2022年8月の活動報告

8月はGENKIプログラム対象校106校のうち、101校の約10,300人に対し、19.7万食のユーグレナクッキーを配布しました。2022年の配布目標240万食に対して、8月末時点で、累計169.3万食を配布しています。