図書館のないスラム街で100冊の本を集めた学校と
工夫して本を読む子どもたち
【2022年9月の活動報告】

1. 図書館のないスラム街で100冊の本を集めた学校と工夫して本を読む子どもたち

日本では、学校に図書館を設けなければならないという法律※1があります。そのため、「学校で本が読めること」は私たち日本人にとっては当たり前なことであり、特別なことではありません。

※1 学校図書館法第3条

しかし、バングラデシュにはそのような法律はなく、図書室のない学校がたくさんあります。もちろん、GENKIプログラムの対象校も例外ではありません。今回は、子どもたちのために100冊もの本を集めた学校の紹介と、大切に本を読む子どもたちの様子をお届けします。

首都ダッカのスラム街に隣接するアパラジェロ・ポロビ学校は、1995年に設立され、現在は4人の教師が約150名の子どもたちに勉強を教えています。
今から26年前の1996年、ソニア校長先生(以下、「ソニア先生」)が初めてこの学校に赴任した時は、同校には本がありませんでした。ソニア先生は「本は子どもたちに教養を与えるものであり、様々な世界を知るきっかけになる」と考え、数名の教師と共に、同校を運営するNGO団体に何度も手紙を送り、本の必要性を訴えました。

しかし、団体側も十分な予算があるわけではなく、わずかな寄付金で学校を運営していたため、なかなか許可は下りませんでした。それでも粘り強く交渉を続けた結果、半年後についに認められ、本棚と15冊の本を購入することができました。

学校で子どもたちに勉強を教えるソニア先生
学校で子どもたちに勉強を教えるソニア先生

その後もより多くの本を集めるため、ソニア先生は自ら子どもたちのために本を購入したり、友人から古本を譲渡してもらったりしました。また、子どもたちも、ダンスや歌の大会、絵画コンテスト等に出場した際、入賞すると副賞として本がもらえるため、自主的にそれを学校に寄付しています。
これらの方法で地道に本を集め続けた結果、同校にある本は約100冊にまで増えました。

  1996年当時の本棚(左)。老朽化により、今年から新しい本棚となった(右)
1996年当時の本棚(左)。老朽化により、今年から新しい本棚となった(右)

本棚には、童話、フィクション、ノンフィクション、料理、科学、社会問題を取り扱ったものなど、様々なジャンルの本が置かれています。しかし、ほとんどは古本で、新しい本はたったの20冊程度しかありません。現在でも当時集めた数十年前の本が残っています。

今でも大切に読んでいる数十年前の本。一部ページがない本も残っています
今でも大切に読んでいる数十年前の本。一部ページがない本も残っています

しかし、同校の図書室にはこの本棚があるだけで、そこには椅子もテーブルもありません。また、幼児たちの教室としても使用されている場所なので、ここでは静かに落ち着いて本を読むことが出来ません。

幼児たちの教室にある本棚
幼児たちの教室にある本棚

そのため、じっくり本を読みたい子どもたちは、廊下にある椅子に座って太陽の入らない薄暗い廊下で本を読んだり、自分の教室に持ち帰ってお昼休みに読んだりしています。

廊下にある椅子に座り本を読むジャヘダちゃん(12歳)
廊下にある椅子に座り本を読むジャヘダちゃん(12歳)
お昼休みに教室で本を読むロハンくん(14歳)
お昼休みに教室で本を読むロハンくん(14歳)

図書室のルールでは、1週間無料で本を借りることができます。貸し借りノートに名前と本のタイトル、借りた日付を記録し、読み終わったらチェックをつけます。予約もできますが、新しい本は人気のため、何週間も待たなければいけない時もあるようです。

本の貸し借り管理ノート
本の貸し借り管理ノート
本の貸し借り管理ノート
借りたい本を探す子どもたち
借りたい本を探す子どもたち

同校で特に本が好きなマビアちゃんを紹介します。
彼女は13歳で、両親、弟、妹と学校近くのスラム街で暮らしています。父親は繊維工場で働き、母親は家事手伝いをして2人で月収約22,000円を稼いでいます。家賃は約4,500円です。本を買えるほどの余裕がないため、マビアちゃんも他の子どもと同様、学校で借りた本を読んでいます。

マビアちゃん(左)と母親(右)
マビアちゃん(左)と母親(右)
学校で本を読むマビアちゃん
学校で本を読むマビアちゃん

マビアちゃんは「私はフィクションが大好き。登場人物に気持ちを重ねて、読み終わった後にこの物語の続きはどうなったのかなとか、色々と想像するのがとても楽しい。だけど、同じ本ばかりだと、内容を覚えてしまってだんだん楽しめなくなってくるから、もっと新しい本が読めればいいなと思います。ソニア先生にも新しい本を集められないかお願いしています。」と話してくれました。

ソニア先生は、「新しい本を購入することは容易ではありませんが、これまでも様々な方法で本を集めてきました。子どもたちに本を読む楽しさを届け、様々な世界を知ってもらえるよう、今後も工夫しながら1冊でも多くの本を集めていきたいです。」と決意を話してくれました。

GENKIプログラムでは、引き続き同校を支援して参ります。

2. 2022年9月の活動報告

9月はGENKIプログラム対象校106校のうち、99校の約9,500人に対し、18.1万食のユーグレナクッキーを配布しました。2022年度の配布目標240万食に対して9月末時点で、累計187.5万食を配布しています。

GENKIプログラム累計配布実績