2025年10月、サステナブルアグリテック領域における飼料・肥料のトータルブランド『いきものたちにユーグレナ』から、初製品として「ユーグレナ入りペレット肥料」3種と「ユーグレナ入り有機培養土」1種の計4製品が発売されました。
微細藻類ユーグレナを活用した100%有機肥料および有機培養土で、植物の健やかな成長をサポートするとともに、持続可能な農業にも貢献する、環境にやさしい製品です。
今回は、本製品の開発・製造・販売を担う、ユーグレナ・グループの大協肥糧より、取締役の工藤さん、製造現場を担当する岩本さんに、肥料業界の魅力や製品の特長、ユーグレナ社との取り組みの意義、そして今後の展開についてお話を伺いました。

オーダーメイドで応える肥料づくりの現場

―まずは、大協肥糧について教えてください。

岩本大和さん(以下、岩本):大協肥糧は、有機配合肥料を中心に、環境にやさしい肥料を小ロットからオーダーメイドで製造しています。育てる作物や環境など、お客様の多様なニーズに合わせて肥料を設計しており、保管している原料は130種類にのぼります。日常的に使用するのは12種類ほどですが、月単位だと30種類ほど使用しています。数年に一度しか使わない原料もありますが、オーダーが入った際にすぐ対応できるよう、常に備えています。生産者の方々が良い作物を育てるための手助けができることが、何よりのやりがいですね。

大協肥糧の原料サンプルの一部

―原料や製品の種類が多いと、管理も大変そうですね。

岩本:確かに大変な部分もありますが、それがまた面白さでもあるんですよ。肥料販売のピークは主に夏野菜と冬野菜用の年2回ですが、製造の繁忙期は1~3月で、毎日20トンほど製造しています。それ以外の時期は、繁忙期に向けて前倒しで製造を進めています。需要を予測して製造数を調整し合わせられたときは大きな達成感もありますね。

肥料でつなぐ、捨てられるものに新たな価値を

―肥料業界の面白さや、大協肥糧の強みはどんなところにあるのでしょうか?

工藤康弘さん(以下、工藤):肥料の魅力は、これまで価値がないとされていた廃棄物を原料として活用できる点にあります。つまり、「ごみ」とされていたものを「資源」として再生できるのが面白いところです。大協肥糧では、肥料の製造を通じて、廃棄に困っていた原料の提供元と、それを活用する生産者の方々をつなぐ役割を果たしています。
実は、肥料の主要成分である窒素(N)やリン(P)は、現在多くを輸入に頼っていますが、下水道など身近な場所からも回収できる資源なんです。目に見えないところに、資源はたくさん眠っているんですよ。

―肥料を通じて、資源の循環が可能になるのですね。

工藤:まさにその通りです。肥料業界は昔から資源の循環活用を行ってきた業界で、サステナブルとの親和性が非常に高いんです。
特に有機肥料は、油粕やもみ殻、魚粉など有機物も原料としていて未利用資源の活用にもつながっています。

―有機肥料は地球環境にもやさしく、これからますます広がりそうですね。

工藤:そうですね。ただ、有機肥料には課題も多く残っているんです。例えば、一般的に肥料は機械で畑に撒かれることが多く、スムーズに機械内を移動できるよう粒状化され、均等に土へ広がることが求められます。そのため、化学肥料は粒状加工されていますが、有機肥料はそうではないため、撒きにくさが課題になります。
また、有機肥料の原料は副産物であるため、安定した供給が難しい場合もあります。有機肥料の環境価値と使用のしやすさは、トレードオフの関係にありますが、大協肥糧ではこの課題に技術で挑み、解決策をつなげられるよう取り組んでいます。

有機肥料づくりを通じて日本の農業の発展を目指す大協肥糧。
インタビューに対応いただいた工藤さんと岩本さん

微細藻類ユーグレナを活かした新しい肥料

―今回の製品には、ユーグレナやクロレラなどの微細藻類が使われていますね。ほかにも生物由来の有機物が原料になっていますが、他の有機肥料と比較してどのような特徴がありますか。

工藤:100%有機由来の原料を使用しています。また、肥効(肥え持ち)や土壌微生物の増加・均衡化を目的に、動物由来・植物由来の原料を10種類以上配合している点も特徴です。そこに有用菌を増やすためにユーグレナやクロレラを配合しました。
これまで“伝統的に用いられてきた多様な有機原料”に、“最新の研究から生まれたユーグレナ・クロレラ”を組み合わせることで、新旧が融合した次世代型の有機肥料に仕上げています。

―製品化にあたって、苦労された点はありますか?

工藤:一般に有機肥料は化学肥料に比べて成分が低めですが、有機肥料の原料の組み合わせを工夫しながら、一定の成分が確保できるよう配合設計しました。また、製造現場とも連携を取りながら、品質の低下を招かないよう配合設計内容を適宜見直しながら製品化しています。

発売した4製品

ユーグレナ社とのサステナブルな共創

―ユーグレナ社と一緒に取り組む意義や、今後の展望について教えてください。

工藤:まずはユーグレナ社の研究開発力を活かして、土の中の目に見えない小さな世界で、肥料やユーグレナ原料がどのように作用しているのかを解明していきたいです。科学的に解明することで、より効果的な製品づくりにつながります。
また、バイオベンチャー企業であるユーグレナ社が肥料業界に参入することで、農業や肥料が社会課題の解決に貢献する分野であることが広く認識されるきっかけになると期待しています。実際に、大協肥糧がユーグレナ・グループに入ったことで、社会課題に関心を持つメンバーが入ってきたりもしているんですよ。

―これからお互いの強みを活かして、よりサステナブルな取り組みをしていきたいですね。最後に、読者のみなさまにメッセージをお願いします。

工藤:食卓からは見えにくい「農」の分野で、私たちは日々、食糧生産や社会課題の解決に向けて取り組んでいます。ぜひこの取り組みを知っていただき、応援していただけたら嬉しいです。

<プロフィール>
株式会社大協肥糧 取締役 製造部長
工藤 康弘

肥料設計や原料の仕入れ、各工場のマネジメント、顧客への営業に従事し、品質向上と事業成長の両立に取り組む。

株式会社大協肥糧 製造部 藤井寺工場
岩本 大和

配合肥料の生産計画立案から原料の段取り、製造ラインの管理、出荷作業まで現場で一連の工程に従事し、日々の安定生産と安全な作業環境づくりに取り組む。