学生時代に起業した、若手の女性経営者同士。手がけているのは、未来の社会につながる事業—。今回は、事業のジャンルは違えど、共通点を持つ2人の対談をお届けします。

課題解決型のアパレルブランドなどで知られ、現在もさまざまな領域で活躍されているハヤカワ五味さん。遺伝子解析サービスを手がける株式会社ジーンクエストの代表であり、ユーグレナ社執行役員の高橋祥子。

共に未来を見据えた新しいチャレンジをしている2人は、どのような視点で今の社会を見つめているのでしょうか。

業界の常識に、新たな視点で挑みたい

高橋祥子(以下高橋):ハヤカワさんのことはいつもSNSで発言を拝見していて、考え方が面白い方だなと思っていました。さっそくですが、今一番力を入れていることってなんですか?

ハヤカワ五味さん(以下ハヤカワ):事業的に力を注いでいるのは、生理用品の開発ですね。もともとアパレル事業を丸5年間やってきたんですが、今は縮小して、思い切り生理用品事業の方へ振り切ろうと考えているところです。

ハヤカワ五味さん

ハヤカワ 五味 Gomi Hayakawa (株式会社ウツワ代表取締役社長)
高校1年生の頃からアクセサリー類の製作を始め、プリントタイツ類のデザイン、販売を受験の傍ら行う。大学入学直後にワンピースブランド《GOMI HAYAKAWA》、2014年8月には妹ブランドにあたるランジェリーブランド《feast》、2017年10月にワンピースブランド《ダブルチャカ》を立ち上げ、Eコマースを主として販売を続ける。複数回に渡るポップアップショップの後、2018年にはラフォーレ原宿に常設直営店舗《LAVISHOP》を出店。課題解決型のコンテキストデザインを得意とする。

高橋:生理用品に対する「隠すべきもの」「パッケージはダサくて当たり前」みたいなネガティブイメージを払拭するべく、精力的に動いていらっしゃるんですよね。そういう感覚が私から見るとすごいな、と。

ちょっと不便なことでも、たいていの人は「まあこういうものだよな」って思ってしまうじゃないですか。それを見過ごさないという感覚が、どういうところからきているのかな? と不思議に思っていて。

ハヤカワ:私の専門分野は小売なんですが、その側面から世の中を見てみると、いろいろな商品に“偏り”とか“思惑”みたいなものが透けて見えてきちゃうことがあるんですよ。例えば生理用品のオンライン販売の割合って、この時代に1パーセントを切ってるんです。

高橋:そうなんですか!確かに販売経路に偏りがありますね。

ハヤカワ:どこで購入されているか見てみると、約65%がドラッグストアなんです。そういう状況だと、ドラッグストア側の思惑がそのまま消費者の購買活動につながる部分があると思うんです。だからオンライン経由の販売を手掛けることで、現在の均衡に新たな視点で挑みたいな、と。

もしオンラインが強いアパレルのジャンルだったら、消費者が好きなものを、好きな方法で買えるじゃないですか。

高橋:システムとしては上手くまわってるかもしれないけれど、イチ消費者としては選択肢にバリエーションが少ないということですね。でもそれを自ら変えようとする姿勢が、他の人とは違うな、と思うんです。

高橋

高橋 祥子 Shoko Takahashi (株式会社ユーグレナ執行役員バイオインフォマテクス事業担当/株式会社ジーンクエスト代表取締役)
京都大学農学部卒業。2013年6月、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍中に株式会社ジーンクエストを起業。2015年3月に博士課程修了、博士号を取得。個人向けに疾患リスクや体質などに関する遺伝子情報を伝えるゲノム解析サービスを行う。2018年4月株式会社ユーグレナ 執行役員バイオインフォマテクス事業担当 就任。

ハヤカワ:資本主義のなかで、変に落ち着いてしまっている業界に、揺さぶりをかけたいっていう意地悪心は正直ありますね。

私のやっていることって、表面的な、デザイン的なことのように見えるかもしれないですが、根本は「業界の体質やビジネスモデルをもう一度見直せるんじゃないか?」という目論見から来ていますね。

高橋:それがハヤカワさんの、すべての活動の共通点なんですね。

ハヤカワ:業界視点で見たら、「なんかヤバイ奴が荒らしに来たぞ」という感じだと思うんですよね(笑)。でも本当はそうじゃなくて、既存のプレーヤーの方をとてもリスペクトしていますし、実際に一緒に取り組ませていただくことも多いんですよ。

常に「BADルート」と「GOODルート」を想定しながら動く

高橋:少し前まで社会の中で、「問いに対して正解を出せる人」が重宝されている印象がありました。しかし最近では、「問いを立てられる人」に重きが置かれるようになったと思います。そういう意味で、ハヤカワさんは問いを立てるのがとても上手なんですよね。

ハヤカワ:人に比べて、ナイーブと言えるレベルで“枯渇”しているかもしれません。結局、日々の中で何かに枯渇していないと、主体的に動こうという欲望が湧いてこないと思いますね。

だから、仮に自分自身に課題がなかったとしても、いろんな課題を自分ごとにしやすい環境にいるかもしれません。実は生理用品の事業についても、はじめは「自分ごと」ではなかったんですよね。

高橋:そうなんですか?意外です。

ハヤカワ:私自身は生理がそんなに重くないし、生理用品の良し悪しについても、そこまで深く悩んでいなかったんですよ。ただ、ふと生理用品の置かれた現状に目を向けたとき、課題意識を持ちました。

もし私が生理に悩む女性の上司になったときに、痛みを理解できないがゆえに「生理くらいで休むの?」みたいな発言をしてしまうんじゃないか、と不安になって。そうならないために何か策を打つべきでは、と思ったんです。

対談風景遠目

高橋:なるほど。ユーグレナ社に話を移すと、「人と地球を健康にする」という経営理念に則って、バングラディシュで栄養問題を抱える子どもたちにユーグレナ入りのクッキーを配っているんです。ただ、これらの問題を自分ごと化して考えることができる人は、まだまだ少ないのが現実です。

課題を課題として捉えられるのって、「そうじゃない方の未来を思い描くことができる人」じゃないですか。その状態と比較してはじめて「課題だよね」と実感することができる。だからハヤカワさんは、そういう想像力がとても豊富なんだなと思ったんです。

ハヤカワ:常に「BADルート」と「GOODルート」を想定している節はあります。多分ゲームの影響なんですけど(笑)。

例えば私が今、生理用品事業を行う場合と行わなかった場合を比較したときに、やっぱり行わないとBADルートに進むんじゃないか、という危機感があります。だから、必死にやろうとしているんですよね。

高橋:今のお話で思い出したんですが、遺伝子の領域でも最近「これ、“BADルート”じゃないか」と感じたニュースがありました。2018年に、中国で「ゲノム編集ベビー」がつくられたと発表されたんです
ゲノム編集はこれから先、難病治療や疾患研究の分野で発展していくはずのジャンルなのに、その研究によって世界中でゲノム編集のヒトへの応用研究が規制される可能性が出てきてしまったんです。
※2018年11月、中国の研究者が世界で初めてゲノムを編集した赤ちゃんを誕生させたと発表。ヒトの受精卵に対するゲノム編集は多くの国で禁止されており、その真偽も含め、世界中の科学者から批判を受けた。

ハヤカワ:まさにBADルート。映画のような話ですね。

高橋:このままの道を進ませてはいけないと、思いましたね。

インプットをすればするほど「自分は特別ではない」と気づかされる

ハヤカワ:やっぱり経営をしていると、いろんなことが起こるじゃないですか。そんなとき、「手遅れになる前に、今すぐにやらなくては」って思いますよね。高橋さんとの共通点を感じました。

高橋:ハヤカワさんは何か辛いことにぶつかったとき……、あ、ありますか? ぶつかること。

ハヤカワ:めっちゃありますよ。

対談風景近目

高橋:よかった(笑)。そんなときはどうやって乗り越えているんですか?

ハヤカワ:寝たら忘れる方かもしれない(笑)。大学1年生の頃から経営をやってきたので、さすがに耐性がつきました。

以前は何か問題が起きた時に、「悪い人がいるせいでこうなった」という思考に陥りがちだったんですが、今は「誰も悪くないけれど、悪いことが起きる場合もある」という事実を受け入れられるようになって。そこから心が平穏になりましたね。

高橋:でも、悪い人がいないのに悪いことが起きる方が、問題って難しくないですか?

ハヤカワ:難しいですけど、逆に言えば人が要因じゃないなら仕組みを考え直せばいいし、タイミングとか運の問題だったら諦めるしかない。

高橋:変えられるものと変えられないものを判別して、変えられるものの方に注力しているんですね。

ハヤカワ:高橋さんは、何か辛いことが起こったらどうするんですか?

高橋:私は論文を読みます。そうすると何だか勇気が湧いてきて。世界中の天才たちがどんどん新しいことに挑戦しているのに、こんな小さなことでつまずいている場合じゃないって思えるんですよね。

ハヤカワ:わかるかも。私も読書をたくさんするようになって、自分ってそんなに特別な存在じゃないんだ、って気づいたんです。みんな同じようなことで悩んでいるし、壁にぶち当たっている。「そこまで深刻にならなくていいや!」って。
逆に、これまでの世界の歴史で、誰も経験してこなかったような悩みにぶち当たったら、それはもう大発見ということで喜ぼうと思っています(笑)。

~後編に続く~

※文章中敬称略

構成:波多野友子/撮影:丹野雄二/編集:大島悠