2018年の売上ピーク後、苦戦が続いたユーグレナ商品※は、現在、過去最高水準に迫る売上まで回復し、収益性も改善しています。成長を支えたのは、単発のヒットではありません。顧客の声から生活課題を捉え、商品、伝え方、売り方を小さく試し、反応を確かめながら改善する。そのサイクルを積み重ねた結果でした。
※ ユーグレナ社のヘルスケア事業における、微細藻類ユーグレナを配合した食品・化粧品の直販売上高

過去最高水準が視野に入っている
ブーム後に直面した、「デジタルでも売れない」という壁
2018年前後、微細藻類ユーグレナ、いわゆるミドリムシへのブームが次第に落ち着き、素材の話題性だけでは新しい顧客に選ばれにくくなっていました。
当時はデジタルシフトを進めていましたが、販売媒体を変えるだけでは成果につながりませんでした。「59種類の栄養素を含む」という特徴を伝えても、それが自分の生活にどう役立つのかまで、十分には届けられていなかったからです。
「私たちは『何を売るか』『どこで売るか』を先に考え、『なぜこの商品が自分に必要なのか』というお客さまの視点を後回しにしていました」
ヘルスケアカンパニーD2C部の船本圭太は、当時をそう振り返ります。課題は媒体ではなく、ブームが去った後も選ばれ続ける理由をつくれているかどうかにありました。
回復に向けて重視したのは、広告の反応だけで判断しないことでした。申し込み後の電話では、どの説明で反応が変わるのか、何が分かりにくいのか、定期購入をためらう理由は何かを、コールセンターとともに細かく確認しました。話し方や説明の順番、商品の価値を伝えるタイミングまで見直すことで、顧客との接点を「売る場」だけでなく、「次の改善点を見つける場」へ変えていきました。
「59種類の栄養素」から、「これからの暮らし」へ
最初の転換点は、シニア層への向き合い方でした。顧客への聞き取りを重ねると、年齢とともに食が細くなり、食事が偏りやすくなることや、複数の薬やサプリメントを毎日摂る負担が見えてきました。
そこで、栄養素の数を説明するだけでなく、「75歳からの人生をどう健康に過ごすか」という生活のテーマを中心に据えました。まず新聞で反応を確認し、成果が見えた内容をテレビやラジオへ展開。顧客の声を聞き、課題を見つけ、商品や訴求に反映し、結果を確かめる。このサイクルが、その後の成長を支える土台になりました。
ここで得られたのは、特定の媒体で成果を出すためのノウハウだけではありません。顧客が日々どのような不便を感じ、どの言葉なら自分のこととして受け止められるのかを捉え、その仮説を実際の反応で確かめる進め方でした。商品開発と販売促進を別々に考えず、一つの生活課題を軸にそろえる。この考え方が、次の子育て世代への挑戦にも引き継がれました。
「一つで補いたい」という声を、商品へ
顧客インタビューでは、「複数の薬やサプリメントを毎日摂るのは負担」「できるだけ一つで栄養を補いたい」という声も寄せられました。
その課題から生まれたのが、5つの健康サポートを一つに集約した「からだにユーグレナ オールインワンタブレット」です。顧客の声を商品設計へ反映した、改善サイクルの一例です。

『からだにユーグレナ オールインワンタブレット』(2026年6月発売)
子育て世代への挑戦は、最初から順調ではなかった
次の挑戦は、子育て世代でした。きっかけは、保護者が既存のブリックタイプのドリンクを子どもにも飲ませているという声です。
一方で、子どもは色や味に敏感で、飽きやすい。保護者が栄養面で良いと考えても、子どもが飲まなければ続きません。試しやすい購入方法を導入すると、多くの人に商品を届けられましたが、その後の定期購入には十分つながらず、採算面に課題が残りました。
試してもらうだけでは、事業として持続しない。そこで商品だけでなく、販売ページや訴求、購入方法まで見直しました。2024年8月には「からだにユーグレナ 子どもの栄養サポート」シリーズを立ち上げ、第一弾として子ども向けドリンク2種を発売しました。しかし、第二弾の商品開発を進めるため調査を進める中、当初の想定とは異なる答えが見えてきました。

「からだにユーグレナ 子どもの栄養サポート」シリーズのドリンク2種
子どもの好物ではなく、親が毎日使えるものを
第二弾の商品として当初検討していたのは、子どもが好みそうなココアやチョコレート味のパウダーでした。ところが、300人を超える子育て世代への調査で最も支持されたのは、ドリンクでもお菓子でもなく「調味料」でした。
調味料であれば、子どもの好みや気分に左右されにくく、保護者が普段の料理に取り入れられます。中でもお出汁は、幼い頃から親しみやすく、石垣島ユーグレナの風味やうま味も生かせます。
「私たちがつくるべきだったのは、子どもが一度喜ぶ商品ではなく、親御さんが毎日の暮らしの中で無理なく続けられる商品でした」
2年以上をかけて開発された「お料理に入れるユーグレナ」は、パッケージにも顧客起点の工夫を取り入れました。野菜が苦手な子どもが緑色に抵抗を感じる可能性を考え、ユーグレナ商品では珍しい紺色を採用。子どもが取り入れやすいことと、保護者が品質や価格に納得して選べることを両立させました。

『からだにユーグレナ お料理に入れるユーグレナ』
商品を説明するより、いつもの食卓を見せる
変えたのは商品だけではありません。SNSで反応の大きかった投稿や動画を分析し、どのような内容が共感を集め、最後まで見てもらえるのかを検証しました。
そこで発信したのは、成分の詳しい説明ではなく、おにぎりやおひたしなど、普段の食卓での使い方です。季節の行事に合わせた料理も紹介し、保護者が自分の家庭で使う場面を自然に想像できるようにしました。
商品、販売ページ、広告、SNSを一つの顧客課題にそろえて改善した結果、子育て世代向け商品の定期顧客数は、2026年6月時点で1.3万人を突破しました。

定期顧客数は前年同期比9倍の1.3万人を突破
SNSの改善でも、閲覧数の大きさだけを追うのではなく、どの利用場面が共感され、購入後の継続につながるのかを見ました。日常の献立に自然に取り入れられることが伝われば、商品は特別な健康対策ではなく、いつもの食卓を支える選択肢になります。商品の機能を一方的に説明するのではなく、顧客が使い続ける姿から逆算してコミュニケーションを設計したことが、接点の広がりを継続的な利用へつなぐ鍵となりました。
POINT V字回復を支えた「5つのステップ」
1 顧客の行動と声を観察する
2 生活上の未充足課題を特定する
3 商品、訴求、販売方法を小さく試す
4 継続率や採算性を含むデータで検証する
5 成果が確認できた施策を商品・媒体へ横展開する
シニア向けと子育て世代向けでは、顧客も商品も異なります。一方、顧客課題を起点に仮説を立て、検証し、改善するプロセスには共通性があります。
V字回復から、次の成長へ
シニア向け商品と子育て世代向け商品では、対象となる顧客も、解決すべき課題も異なります。しかし、成長に至るプロセスには共通点があります。
顧客の行動と声を観察し、生活上の課題を見つける。商品や訴求を小さく試し、継続率や採算性を確かめる。そして成果が確認できた施策を、ほかの商品や媒体へ広げていく。
ユーグレナ商品のV字回復は、ミドリムシが持つ健康価値によって「続けたい」と長く愛用してくださるお客様の存在に支えられています。しかし、それだけで生まれたものではありません。顧客の声とデータを起点に、商品、伝え方、売り方を更新し続ける力が、事業の中に蓄積されてきた結果です。
素材の話題性から始まったユーグレナ商品は、顧客の暮らしを起点に価値をつくる事業へと変わりつつあります。この改善サイクルを、まだ見えていない顧客課題にどう展開していくか。V字回復の先にある次の成長は、すでに始まっています。
<プロフィール>
船本圭太(ふなもと けいた)
D2C部 部長代理 兼 ヘルスケア推進課 課長
2012年中途入社。化粧品通販立ち上げ以降から通販部門に長く携わる。直近では、シニア向け健康食品の新規広告を主導し、新商品「からだにユーグレナ オールインワンタブレット」を発案。

