イスラム教の学校、マドラサで学ぶ子どもたち【2023年6月の活動報告】

​今月のレポートではGENKIプログラム提携校のうち、イスラム教の教育施設「マドラサ」で学ぶ子どもたちをご紹介いたします。

1.イスラム教の教育施設「マドラサ」

世界有数のイスラム教国であるバングラデシュ の教育制度には、普通教育課程と技術教育課程のほかに、マドラサと呼ばれる宗教教育課程があります。このマドラサは大きく2種類あり、公立校の一般教育と宗教教育を行う「アリア・マドラサ」と、私立校の宗教教育のみを行う「コウミ・マドラサ」です。

アリア・マドラサでは、小学校から大学院まで整備されており、学生は一般の学校と同じ修了証を取得することが可能です。

首都ダッカにあるマドラサ

GENKIプログラム提携校でも21校がマドラサで、2532人の子どもたちが在籍しています。マドラサの多くが寮を整備していますが、企業やNGOからの寄付と資金援助で運営されているため、すべての生徒が入寮できるわけではりません。孤児や貧しい両親を持つ子どもたちなどが、寮生として受け入れられています。

南ダッカ市のレイヤバザール地区にあるGENKIプログラム提携校のイスラ・マドラサは、2016年に貧困が原因で教育を十分に受けられない子どもたちに一般教育とイスラム教育を行うために創設されました。全校生徒172人のうち、寮生は40人です。彼らの多くが厳しい環境で暮らすホームレスや孤児などであるため、学校が食生活と教育を全面的にサポートしています。

寮に暮らす子どもたちは、規律正しい共同生活を送ります。
夜明け前に起床すると、まずはお祈りをし、その後コーランの勉強、自習を済ませてから朝食を取ります。朝食には、米、マッシュポテト、レンズ豆のダルスープ、バングラデシュ風フライドポテトが食堂に並びます。栄養が偏っているため、不足している栄養分はGENKIプログラムで配布されるユーグレナクッキーで補います。

昼食と夕食は週単位でメニューが決まっており、昼食では野菜やダルスープと卵料理が、夕食には鶏肉や牛肉などの肉類も加えて提供されます。

寮のキッチン
マドラサの食堂で提供される米、卵、野菜とダルスープ
イスラム教では右手を使って食べる

マドラサでは昼食後に入浴を済ませ、礼拝をします。そのあとも授業がびっしりと組まれ、子どもたちは午後4時30分に授業を終えます。ようやくの自由時間ですが、彼らが遊べるような場所は多くありません。人口密度の高いダッカでは、校庭があるマドラサが少ないため、子どもたちは教室や廊下など校内の空いているスペースを使ってクリケットをします。

マドラサの授業内容は、アラビア語やイスラム教の預言者ムハンマドの言行録「ハディース」を学ぶ宗教科目と、バングラデシュの公用語であるベンガル語、英語、算数、さらに哲学、経済、政治のグループディスカッション等の一般科目のカリキュラムからなります。

全てのスケジュールを終え、子どもたちは午後10時にようやく眠りにつきます。このように日課を通して、マドラサの生徒は規律を身につけていくのです。

机を並べて学ぶマドラサの子どもたち
授業ではコーランやアラビア語も学ぶ

5歳のロムジャン君は、イスラ・マドラサの幼児クラスに在籍しています。実の両親が離婚したため、彼は父方の祖母とマイメイシン市で暮らすようになりました。祖母は懸命に育ててくれましたが、栄養価の高い食事をなかなか作れないため、ロムジャン君をイスラ・マドラサに入寮させたそうです。ロムジャン君は同校で多くの友人に出会い、幸せや希望を分かち合える家族のような存在を得ました。

担任のアブドゥル先生はロムジャン君について、「入寮当初は新生活に戸惑っていたようですが、だんだんと身の回りのことを自分でできるようになりました。ロムジャン君はきれい好きで、持ち物は整理整頓し、掃除も率先して行っています。友だちとも協力しているようです」と感心しています。先生たちは子どもたちが学校の規律に順応できるよう、全面的にサポートしてくれます。

ロムジャン君も「新しい規律に慣れるまで不安な時もあったけど、先生たちが優しく教えてくれたよ。先生たちは僕たちのことを大切にしてくれるんだ。僕はマドラサが大好きだよ」と充実感に満ちているようです。

ユーグレナクッキーを食べるロムジャン君
日課の皿洗いを意欲的にこなす
ロムジャン君(左)とクラスメイト

マドラサの生徒たちは主にモスクの管理人や教師、聖職者などの職業に就き、寮生活で身につけた規律意識を社会で生かしていきます。

GENKIプログラムは今後も子どもたちを支援してまいります。

2. 2023年6月の活動報告

6月はGENKIプログラム対象校のうち、86校の約9600人に対し、15万食のユーグレナクッキーを配布しました。

引き続きのご支援をどうぞよろしくお願い致します。