幸せと思いやりを届ける「酸素ボックス」
【2022年11月の活動報告】

今月のGENKIレポートでは、ユニークなアイデアで寄付活動を行っている、GENKIプログラムの対象校をご紹介します。

1.幸せと思いやりを届ける「酸素ボックス」 

GENKIプログラムの対象校の1つ、フルクンリ学校は、首都ダッカの北部、ノビノゴール・ハウジング・スラムにあり、360 名の子ども達が学んでいます。同校は、2004年に設立され、スラムに住む人々により良い教育を提供するだけでなく、バングラデシュの将来に貢献する誠実で心優しい人物を育てることを目指しています。

フルクンリ学校の子ども達
フルクンリ学校の子ども達

創設者のタクビル氏は、自らを「スラム街のチェンジメーカー」と評しています。貧しい人々を親身に助ける父親の下で育ち、幼い頃から助け合いの精神を身につけてきました。そんなタクビル氏は、同校で何か斬新な取り組みを始めたいと考えていました。

フルクンリ学校の創設者、タクビル氏
フルクンリ学校の創設者、タクビル氏

そのきっかけは、2015年2月のある朝、学校の近くで、同校の子ども達が障がいを持つ貧しい男の子に、子ども達にとって決して少ない金額ではない70円程度のお金を恵んでいるのを目にしたことです。タクビル氏は、そんな子ども達の思いやりに感銘を受け、子ども達、両親、先生、学校関係者を巻き込んで、組織的に貧しい人々を支援する仕組みが作れないか、と考えました。
早速、タクビル氏は先生達に相談しました。そこで話に挙がったのは、多くの学校に設置されている意見箱でした。同校にも、家族や子ども達からの声を集める意見箱はありました。タクビル氏は、この意見箱からアイデアを得て募金箱を設置することを先生達に提案し、子ども達からも賛同を得ることができました。
取り組みを始めるにあたり、この募金箱の名前を決める必要がありました。なぜなら、もし募金箱を設置したことで「寄付をしなければならない」と思わせてしまったら、貧しい子どもたちにとって重荷になるからです。そこで、「子どもたちの寄付への思いやりが、貧しい人たちの酸素となって、生きる糧につながるように」との思いを込め募金箱に「酸素ボックス」という名前をつけることにしたのです。

学校の入口に設置された、意見箱(上)と酸素ボックス(下)
学校の入口に設置された、意見箱(上)と酸素ボックス(下)

子どもたちは以下の仕組みで酸素ボックスを使って募金を集めます。貧しい人々、特に体の不自由な人たちのために、自分たちの小遣いから可能な範囲で、約10円から15円を酸素ボックスに投入します。
同時に、タクビル氏は学校の支援者や知人からもお金を募ります。寄付を受ける人は、近隣のスラムで暮らす人々や、先生たちのつてで見つかった支援が必要な人たちに、タクビル氏が状況を聞き取った上で決定します。

酸素ボックスにお金を入れる子ども達
酸素ボックスにお金を入れる子ども達

酸素ボックスは3ヶ月に一度、子どもたち全員の前で開けられます。通常は子ども達から平均1,300円から1,500円が集まります。タクビル氏が支援者や知人から募った2,000円と合わせると、3,300円から3,500円になります。これまでの8年間で酸素ボックスに集まったお金は、約72,000円にまで増えました。

酸素ボックスを開け、集まったお金を数える
酸素ボックスを開け、集まったお金を数える

タクビル氏は、本取り組みの成功の鍵は、同校のすべての子ども達が、どの様な家計の事情においても、寄付しようという気持ちになっていることだと考えています。同校のジナット先生は「長年にわたり、子ども達が寄付するのを見て、将来への希望を強く感じます。子ども達が大きくなった時、施しの気持ちを大切にできる人に育っていくと思います」と話してくれました。

集まったお金に誇らしげな、子ども達とジナット先生(黄色スカーフ)
集まったお金に誇らしげな、子ども達とジナット先生(黄色スカーフ)

具体的な活用事例を紹介します。今年、ビビ・アシヤさん(68歳)は、酸素ボックスから約2,000円、校長先生の知人から約1,000円の寄付を受け取りました。ビビさんは高齢のため、体の痛み、糖尿病、高血圧などの健康上の問題があり、より良い治療を求めて、2001年に故郷であるバングラデシュ南部のボラ県から、首都ダッカに移り住みました。ビビさんにはボラ県に住む息子がいますが、ダッカでは面倒を見てくれる人がいません。ごくまれに、親族が料理や食料の買い出しを手伝ってくれるのみです。
ビビさんは、病気の治療のため、毎月1,500円程度の薬が必要ですが、お金が足りずに薬を諦めることもありました。しかしこの寄付を活用し、通院が可能になり薬を買えるようになったといいます。

ビビさんと彼女の住む家
ビビさんと彼女の住む家
ビビさんに子ども達から寄付を手渡し
ビビさんに子ども達から寄付を手渡し

「私たちの寄付は少額ですが、寄付がもたらす効果を考えると、決して小さくないと思っています。ぜひ、この活動を続けていきたいです。本当に困っている人たちにとって、とても大切な取り組みだと思います。」と、4年生のサイモン・カーン君(9歳)は言います。また、5年生のナジュミンちゃん(11歳)は「無力な人々を助けるために、私の母はいつも、わずかな金額でも寄付をするようにと言ってくれます。タクビル先生も、僕たちに寄付の意義を伝えてくれます」と話してくれました。

酸素ボックスへ寄付するナジュミンちゃん
酸素ボックスへ寄付するナジュミンちゃん

GENKIプログラムは、今後もフルクンリ学校の子ども達を支援してまいります。

2.2022年11月の活動報告

11月はGENKIプログラム対象校のうち、100校の約10,900人に対し、22.6万食のユーグレナクッキーを配布しました。
2022年度の配布目標240万食に対して11月末時点で、累計231.4万食を配布しています。

GENKIプログラムでのクッキーの配布枚数実績