ストリートチルドレンを救うダッカのシェルター
【2022年5月の活動報告①】

1.ストリートチルドレンを救うダッカのシェルター

世界には、路上で暮らしたり働いたりしている「ストリートチルドレン」がいます。ストリートチルドレンは住まいや働く場所が定まらないため、正確な人数の把握は難しいものの、世界に約1億5000万人いると推計されています※1

バングラデシュには、全国で150万人以上のストリートチルドレンがいるといわれています※2。彼らの多くは、家族の死亡や病気、貧困が原因で、子どもを十分に養うことができず、路上生活をせざるを得なくなりました。リサイクル可能なごみを集めたり、施しを求めて物乞いをしたり、首飾りやお菓子を売り歩いたりして、毎日少額のお金を得て暮らしています。ストリートチルドレンは事件や犯罪に巻き込まれるケースがあり、特に都市部を中心に、性的搾取や薬物の危険にさらされてしまう子どもたちもいます。

※1 STREET CHILD UNITED The UN General Comment on Street Children is published
※2 D+C When crime is the best of many bad options

首都ダッカのミルプール地区にある、マエル・アチョル・シェルターという避難所は、このようなストリートチルドレンに安全な生活と教育の場を提供しています。マエル・アチョルとは、ベンガル語で「母親の影、愛情」という意味です。

この シェルター は、ストリートチルドレンを少しでも救うために、2002年に設立されました。

避難所で生活する子どもたち
シェルター で生活する子どもたち

避難施設の立ち上げ当時は25人の子どもたちを守るために安全で快適な建物を探し、屋内外の設備を整えたりと、運営に必要な多くの準備を進めてきました。バングラデシュ国内だけでなく欧米の財団等に、シェルターの意義を伝えながら、こつこつと取り組みを進めた結果、彼らからの資金や技術協力を得ることができ、だんだんと拡大することができました。

現在このシェルターは、4階建ての建物内に、3歳から22歳までの300人あまりの子ども・若者たちを受け入れるようになりました。シェルターでは食事の提供だけではなく、教育や医療ケアの提供もしています。施設の広さの限界から、300人全員がそこで寝泊まりできるわけではなく、約半数の子ども・若者たちは屋外や職業訓練場で寝泊まりをせざるを得ない状況です。

避難所内の教室の様子
シェルター内の教室の様子
避難所内の遊具
シェルター内の遊具
絵画を学ぶ子どもたち
絵画を学ぶ子どもたち
絵画を学ぶ子どもたち

子どもたちは大きくなるにつれて、縫製などの職業訓練を行い、シェルターが縫製員・販売員などの仕事を斡旋することで、すべての子どもたちの就職の実現を目指しています。

縫製を学ぶ少女
縫製を学ぶ少女
縫製を学ぶ少女

路上で生活している子どもたちには、シェルターの存在を伝え、共同生活に呼び込んでいますが、彼らの恐怖を解消し、その先に進めることは容易ではありません。シェルターの職員が路上に出てストリートチルドレンを見つけたときには、彼らに話しかけ、根気強く対話を続けるそうです。対話を続けることで、子どもたちは次第に職員に心を開き、シェルターに足を運び、生活を始めるようになります。このような取り組みは、保護するストリートチルドレンの数を増やしたいという、職員の強い思いがあります。

そんなシェルターで生活する子どもの1人をご紹介します。アブドゥル・ハキム君、14才です。
彼はダッカの鉄道の駅舎周辺で生活してきました。ストリートチルドレンの時は、路上で寝泊まりし、食べ物や飲み物をどのように入手するかばかりを考えていたといいます。時々、チャイの屋台や安宿に行って日雇いで働き、日銭を稼いで暮らしていたそうです。

アブドゥル・ハキム君
アブドゥル・ハキム君

アブドゥル君は「路上で生活していたとき、勉強や遊びのことなんて考えられませんでした。でもシェルターに入ってからは、安心してすごせるようになりました。今は7年生として勉強しています。シェルターの子どもたちと遊びながら、1日に4回食事ができるようになりました。安全な部屋でぐっすり眠れています。僕は将来、僕と同じような境遇の子どもたちのために、何かしたいと思っています。」と言ってくれました。

ユーグレナクッキーを食べる、避難所の子どもたち
ユーグレナクッキーを食べる、シェルターの子どもたち

GENKIプログラムは、このような施設に対しても、ユーグレナクッキーを配布しています。

5月の活動報告の続きはこちら
毎週末に父親の仕事を手伝うスラム街の子ども【2022年5月の活動報告②】