新型コロナワクチン接種の様子と
視覚障がいをもつラビアちゃんの紹介
【2022年2月の活動報告】

1.2022年2月の活動報告

2月はGENKIプログラム対象校93校のうち88校の約10,000人に対し、20万食のユーグレナクッキーを配布しました。

2.新型コロナワクチン接種の様子

皆さんは新型コロナワクチンを何回接種しましたか?世界では、新型コロナワクチンは233の国と地域で接種されています。免疫獲得に2回以上の同ワクチン接種が必要とされている中、3月30日時点で、日本では1回目の接種率は80.9%、2回以上の接種率は79.5%です。※1

バングラデシュでは2021年2月から新型コロナワクチン接種が開始されましたが、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が急増した6月後半では同ワクチンの接種率が人口比で約6.7%程度に留まっていました。感染拡大防止に寄与するため、日本政府はバングラデシュ政府に7月以降、合計約455万回分の新型コロナワクチンを、COVAXファシリティを通じて供与しました※2。これらの努力が功を奏し、3月30日時点では1回目の接種率が77.3%、2回以上の接種率が62.6%に到達しました※3。現在は2回以上の接種を推進している状況です。

※1,3 日本経済新聞 チャートで見るコロナワクチン 世界の接種状況は
※2 外務省 COVAXファシリティを通じたバングラデシュ人民共和国に対する新型コロナウイルス・ワクチンの供与

新型コロナワクチン接種開始当初は55歳以上が対象でしたが、7月には30歳以上と対象年齢範囲が広がりました。そして11月には12歳-17歳の子どもたちまで対象が拡大しました。GENKIプログラム対象校が多く存在する首都ダッカのスラム街の学校では、12月中旬から1回目の新型コロナワクチン接種が開始されました。

以下の手順で子どもたちは新型コロナワクチンを接種しています。
① 学校は同ワクチン接種要望書を管轄する教育事務所に提出
② 教育事務所は学校に接種日、接種会場(主に近隣学校)の情報を書類とともに送付
③ 学校は対象の子どもたちを接種日に指定会場に連れていき、接種実施

日本と同様、バングラデシュでも子どもたちに新型コロナワクチンを接種させることには抵抗があります。ましてや、これまで予防接種する機会がほとんどなかったスラム街の人たちは、子どもがワクチン接種することに大きな不安を抱いていました。そのような中、両親の承諾を得ることの苦労は並大抵のことではありません。先生方は新型コロナワクチン接種説明会を学校で開催し、同ワクチンの意義や安全性を両親に説明するなどして実施にいたりました。

GENKIプログラム対象校の1つであるナヤントラ学校では、1月12日に1回目(71人)、2月17日に2回目(51人)の接種が行われました。中学1年生のモハマド君は「新型コロナワクチンを受ける前は不安でいっぱいだったけど、想像したよりも痛くはなかった。1回目、接種後数日間は微熱があったけれど、2回目は体調に変化がなかった。」と話してくれました。また、ある親は「子どもへの影響を心配していましたが、説明会で新型コロナワクチンの効果を理解することができました。私たちのような大人はオンラインで同ワクチン接種登録をするため、手続きが大変です。子どもたちは学校の一括手配で集団接種ができるので助かっています。」と話してくれました。

会場外で予診票をもって並ぶ子どもたち 
会場外で予診票をもって並ぶ子どもたち
先生が会場外で受付を行う
先生が会場外で受付を行う
会場内で接種を待つ子どもたち   
会場内で接種を待つ子どもたち
ある接種会場の様子
ある接種会場の様子
新型コロナワクチンを接種する子どもたち
新型コロナワクチンを接種する子どもたち
新型コロナワクチンを接種する子どもたち

GENKIプログラムの現地スタッフも説明会に参加したり、先生にオンラインで行う新型コロナワクチン接種登録の方法を教えたりと、様々な形で協力をしています。日々の学校訪問では、GENKIプログラムだけではなく、学校運営全体に関する要望を先生からいただくこともあります。今回の新型コロナワクチン接種に関しての活動は、子どもたち、両親、先生の健康を支援する一環であり、当社のパーパスである「人と地球を健康にする」ことにもつながると考えています。

今後も、子どもたちの「GENKI」を支える活動を続けて参ります。

3.視覚障がいをもつラビアちゃんの紹介

今月は、ダッカアイディアルキャデット学校に通う8年生(15歳)のラビアちゃんを紹介します。ラビアちゃんは生まれつき原因不明の角膜の病気のため、左目は全く見えず、右目は弱視です。

8年生(15歳)のラビアちゃん
8年生(15歳)のラビアちゃん

同国では、2010年時点で人口約1.6億人の内、障がいを持った子どもたちは約160万人とされています※4。 障がい児教育に関しては、2001年に障がい者福祉条例が制定され、主に、特殊教育機関を設立する、障がい児を普通学校の授業に参加する機会を設ける、障がい者と共に働く教師やその他職員に対し訓練を行う、などが決められました※5

2011年時点で、障がい児数に対し、公立の特殊学校は全国で13校のみです※6。民間組織が運営する特殊学校も存在しますが、入学金がスラム街の人たちの平均月収に値する約2万円、毎月の授業料が普通学校の授業料は約400円であるのに対し、特殊学校は約2,000円するなど、スラム街の子どもたちが公立でない特殊学校に通うのは容易ではありません。

※4,6 THE BORGEN PROJECT EDUCATION FOR CHILDREN WITH DISABILITIES IN BANGLADESH
※5 神戸学院大学 バングラデシュの障害児教育の現状と課題

ラビアちゃんの自宅近くには、公立の特殊学校は存在せず、普通学校に通っていましたが、最近転校することができました。転校先は、2021年5月の活動報告で紹介した「ソーシャルワーカー・チャンピオン」こと、マナン校長先生が運営する学校です。マナン校長先生の理解がラビアちゃんの転校につながりました。

彼女は、授業中短い時間であれば教科書を読むことができますが、長時間になると目の疲労から涙が出てしまいます。現在は、黒板の文字が見えるよう前席に座ったり、友達が代わりにノートに文字を書いてくれたり、隣で教科書を読んでくれたりと、先生と友達が協力してくれています。見慣れた道である自宅と学校の往復は1人ですることができますが、初めての道は危険があるため家族や友達が付き添っています。

教科書を読むラビアちゃん
教科書を読むラビアちゃん
登下校の様子
登下校の様子

ラビアちゃんの家族は彼女の視力が少しでも回復し、日常生活に支障がでないようになってほしいと願っています。マナン校長先生の支援により、右目は信頼できる大きな病院で角膜移植をすることで8割の視力が戻ることが分かりました。しかし手術代には約25万円かかります。校長先生は寄付を募り、約13万円を負担してくれる支援者を見つけてくれました。残りの分についても校長先生が引き続き実業家や様々な人脈を通じて支援者を探してくれています。

お父さん、ラビアちゃん、お母さん
お父さん、ラビアちゃん、お母さん

マナン校長先生は、彼女が手術を受けられるよう寄付を集めると同時に、彼女が学校生活で過ごしやすい環境作りにも注力しています。具体的には彼女が「他の友達と自分が違う」と感じず、差別を受けることがないよう、先生や子どもたちに指導することです。

ユーグレナクッキーを食べるラビアちゃん
ユーグレナクッキーを食べるラビアちゃん
マナン校長先生とラビアちゃん
マナン校長先生とラビアちゃん

バングラデシュでは多くの人々がこのように社会的弱者を支援する場面を見受けることができます。これらはイスラム教の「喜捨の文化」に基づくものであり、洋の東西を問わずこのような文化があることは嬉しい限りです。本レポートでは今後もこのような事例を紹介していきたいと思います。
   
引き続きのご支援をどうぞよろしくお願い致します。