私たちが日々口にする鶏肉。その背景には、気温や湿度、床の状態、餌の食べ方までを細やかに見ながら、にわとりの成長を支える生産者の仕事があります。今回訪ねたのは、愛知県岡崎市の株式会社シガポートリー。農場で働く山田さん、ニーさん、農場運営を担う中島さん、太田さんに、ひなが育つ過程と養鶏の難しさ、仕事に込める想いを伺いました。
ひなが安心して育つ環境をつくる
ーひなを育てるうえで、特に大切なことは何ですか?
山田さん:大きく二つあります。温度と換気です。孵化したばかりのひなを農場に迎えたら、まずは32度程度から始め、日齢が上がるにつれて設定温度を下げていきます。ひなの成長段階に合わせて、過ごしやすい環境を整えることが基本です。

ー鶏舎の中で、ひなが集まっている場所がありますね。
山田さん:ガスブルーダーという、ストーブのような機器の周りです。機器から1メートルほどの場所が、ひなにとっての適温帯になります。餌を食べ、運動し、安心して休める。そんな環境づくりを大切にしています。

「食べられているか」は、のど元で確かめる
ーひなの体調は、どのように確認するのでしょうか。
ニーさん:のど元にある「嗉嚢(そのう)※」に触れます。ここは、いったん食べたものをためておく器官です。水だけならぷよぷよし、餌を食べていれば少し硬く感じます。何も入っていないと、空の袋のような感触です。触れることで、餌を食べられているか、体調に変化がないかを見ています。
※ 嗉嚢(そのう):鳥の食道の途中にある、食べたものを一時的にためる器官。現場では、ひなの採食状況を確認する手がかりの一つとして触診しています。

カーテンの開け閉めが、鶏舎の環境を左右する
ー成長すると、管理のポイントはどう変わりますか。
山田さん:目安として、14日齢までは温度、40日齢までは温度と換気、40日齢以降は換気がより重要になります。水を飲み、排泄する量が増えると、床が湿りやすくなります。にわとりは床にお腹をつけて休むため、床が濡れていると体が冷え、体調を崩す原因になります。もみ殻をまいて湿り気を抑え、換気することが大切です。
ー夏場の管理で、特に難しいことは何ですか。
ニーさん:暑い日は水をたくさん飲むため、床が湿りやすくなります。鶏舎のカーテンを開閉し、換気と温度を調整しますが、変化が急すぎるとにわとりの負担になります。毎日様子を見て、その時々に合う対応をすることが欠かせません。
ーマニュアルだけでは対応しきれないのでしょうか。
山田さん:同じ設備でも、誰がどのように育てるかで、餌を食べる量や健やかに育つ羽数が変わります。環境の変化に気づき、先回りして手を入れる。そこに養鶏者の経験と技術が表れます。
「わたしのこども」と呼ぶ理由
ーニーさんは、にわとりをベトナム語で「Con của tôi(わたしのこども)」と呼んでいたそうですね。
ニーさん:少し恥ずかしいですが、それくらい身近な存在です。大学では動物について、ベトナムで1年、ロシアで3年学びました。日本の養鶏場で働いて8年目になります。以前は採卵鶏の養鶏場で働いていて、ずっとにわとりに関わってきました。

ー育てる人の違いは、にわとりにどのように表れますか。
山田さん:にわとりは、気温や水質などの環境変化に敏感です。土砂崩れなどによる川の水質への影響や気温などの変化はにわとりに大きな影響をもたらします。そのため、養鶏者が小さな変化をどれだけ確認できるかが、健やかに育つ羽数に関わります。
健やかに育つことのできなかったにわとりは、命を落としてしまったり出荷先で処分されてしまったり、またB品扱いになってしまったりして、願うかたちで食卓に届けることができなくなってしまいます。
日々大切に育てているにわとりを食卓でおいしく味わってほしい。そう願う養鶏家にとって、どれだけの子たちが食卓に届くのかがやる気にもつながりますし、養鶏を続ける意味にもなっています。
「いきものたちにユーグレナ」に期待すること
ーにわとりを育てるなかで、どのような難しさを感じていますか。
太田さん:こまめに、丁寧に手を入れなければならない仕事だということです。命を預かる難しさに、最初はとても驚きました。
中島さん:以前、牛に関わる仕事をしていたことがありますが、にわとりがこれほど繊細だとは思いませんでした。温度、湿度、風の変化に敏感です。だからこそ、毎日の環境管理が重要になります。
ーそうした日々の管理に加えて、にわとりの健やかな成長を支えるために取り入れたのが、ユーグレナなのですね。
山田さん:はい。多くの方に鶏肉として召し上がっていただくためには、日々の環境管理に加えて、成長に合わせた健やかな体づくりを支えることが大切です。そのための一つの選択肢として、ユーグレナの活用に期待しています。
ー今後、ユーグレナにどのようなことを期待していますか?
山田さん:環境の変化による負担に対応できるような、健やかな体の土台づくりへの貢献を期待しています。にわとりにとって食べやすいものであることも大切です。将来的に肉の食感や味わいにどのような可能性があるのかも、研究しながら確かめていきたいですね。
今回の取材で見えたのは、温度計の数字だけでは捉えきれない、育てる人の観察力でした。ひなの集まり方、嗉嚢の感触、床の湿り具合。小さなサインを受け取り、その日の環境に合わせて手を入れる。その積み重ねが、にわとりを健やかに育て、食卓へ届けることにつながっています。
<プロフィール>
株式会社シガポートリー 岡崎農場
愛知県岡崎市にある、株式会社シガポートリーの肉用鶏生産農場。雛の受け入れから出荷まで、温度や湿度、換気などを細やかに管理し、日々変化する鶏の様子を丁寧に観察しながら育てています。同社は滋賀県甲賀市に本社を置き、肉用鶏の育成から処理・加工、販売までを一貫して手がけています。

