ユーグレナの研究は、基礎研究から社会実装へと確実に歩みを進めている。
2026年4月に発表したパラミロン高含有株「金のユーグレナ(EOD-1株)」の譲受により、「緑のユーグレナ」と「金のユーグレナ」が仲間になることで、今後のユーグレナの展開は、さらに加速しそうだ。
創業メンバーであり“ミドリムシ博士”として研究を牽引してきた鈴木 健吾さんに、ユーグレナ研究の現在地と、その先に見据える可能性について話を聞いた。

ユーグレナ歴20年越え!ミドリムシ博士鈴木さんが語る、ふたつのユーグレナ。

─今回の事業譲受は、鈴木さんにとっても念願の一つだったと聞いています。

鈴木:「念願」というと少し言い過ぎかもしれませんが、これまで自分たちが積み重ねてきた研究に対して、異なる視点や手法が加わることには、ずっと大きな可能性を感じていました。
研究というのは、一つのチームだけで完結するものではなくて、他の研究者や別の環境で同じように再現されることで、その確からしさが高まっていくものだと思っています。
そういう意味では、今回の事業譲受によって、これまで関わってきた人たちの知見や思いを引き継ぎながら、それをさらに広げていける可能性があると感じていますし、それをどう社会に伝えていくかという責任を改めて感じています。
単に何かを足すというよりも、それぞれの研究が掛け合わさることで、より立体的に価値が伝わっていく。そういう形になればいいなと思っています。

─社会に研究価値を伝える、という点で、研究者として意識していることは?

鈴木:研究というのは、単に成果が出れば良いというものではなくて、それが社会の中でも同じように成り立つかどうかが重要だと考えています。
そのためには、自分たちの中で得られた結果が、別のチームや別の環境でも再現されるのか。そうした確認を重ねることで、研究としての確からしさを高めることが重要です。
一方で、研究が進めば進むほど、見えてくる可能性も広がっていきますが、それをそのまま伝えてしまうのではなく、本当に社会の中で意味を持つのかを見極めながら届けていく必要があるとも感じています。
そういう意味で、社会実装は「広げること」だけではなくて、「きちんと検証し続けること」とセットで進んでいくべきだと常に意識しています。その積み重ねがあってこそ、研究が社会に根付いていくのではないかと思います。

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ー今ではミドリムシ博士と呼ばれる鈴木さん。ミドリムシとの出会いについて教えてください。

鈴木:大学時代の、研究室での出会いがきっかけです。
最初は、二酸化炭素を吸収して栄養をつくるという性質に興味を持ち研究を進めていましたが、栄養や健康・免疫との関係性など、より広い可能性に気づくようになりました。
大量培養できるようになった当時からミドリムシを摂取しているので、振り返ってみると、そこから20年以上、ほぼ毎日飲み続けていることになります。継続して飲み続けているという意味では、世界ランキングで上位に入ると思います(笑) 
ミドリムシの商品をいろいろ摂取していることもあってか、おかげでとても健康です。 
ミドリムシは知れば知るほど、その可能性が広がっていく感覚があって、ミドリムシと大学で出会って以降、今でもずっと夢中であることは変わっていないですね。 

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ー健康や免疫領域に関わる研究では、慎重な姿勢が求められる場面もあると思います。大切していることは?

鈴木:サイエンティフィックにあやふやなことを、そのまま人に伝えたくないという思いがあります。
一方で、研究が社会に届いていく中では、実際に摂取された方から体調に関する声をいただくこともあり、そうした瞬間に研究と生活がつながっていると実感し、うれしい気持ちになります。ただ、その感想だけで判断するのではなく、本当に再現性があるのか、どのような条件で成り立つのかをきちんと検証し続けることが、研究者として重要だと考えています。
検証を積み重ね、より意味と価値を持つかたちにしていくこと。そのために、知見を正確に理解し、丁寧に伝えていくことが、社会実装につながるのだと思います。

ー最後に、ユーグレナ社の研究のこれからについて、どのように考えていますか?

鈴木:ミドリムシの研究に関心を持つ人が、少しずつ増えてきている実感があります。
2025年12月に、ユーグレナの屋外大量培養成功から20年という節目を迎え、研究を支えてくださった方や、新しく関わる人の広がりを感じる機会も増えてきました。
今回事業譲受のような取り組みも含めて、そうした人たちが関わる機会が増えていくことで、研究自体の広がりも自然と大きくなっていくのではないかと思っています。
その中で、自分たちとしては、積み重ねてきた知見をもとに、きちんとした形で社会に伝えていくことを続けていくことが使命だと考えています。
そうした取り組みの積み重ねが、人や地球の健康に貢献できる未来につながっていくと信じて、これからもミドリムシとともに歩み続けたいです。

鈴木 健吾 (すずき けんご) 
株式会社ユーグレナ 創業メンバー  エグゼクティブフェロー
東京大学農学部卒、同大学院修士修了。博士(農学・医学) 
2005年、在学中に同社を共同創業し、ミドリムシの屋外大量培養の実用化を主導してきた。博士(農学・医学)。理化学研究所チームディレクター、東北大学特任教授、マレーシア工科大学客員教授などを兼任。「ミドリムシ博士」として、研究成果の社会実装に取り組む。著書に『ミドリムシ博士の超・起業思考』。 


解説:この記事の背景

ユーグレナ社はこれまで、「緑のユーグレナ」を中心に栄養面の価値を軸とした研究を積極的に進めてきた。一方で、「金のユーグレナ(EOD-1株)」は、パラミロンを高含有する特性を持ち、免疫など機能性を中心に研究が進められてきた素材である。
今回の取り組みは、こうした異なる強みを持つ二つの研究の流れを一つに統合することで、「栄養」と「機能性」というふたつの価値を横断的に捉えながら、ユーグレナやパラミロンについての活用可能性を大きく広げるきっかけとなる。

単に素材や機能の種類が増えることではなく、同じ免疫というテーマに対しても、これまで異なる考え方で積み重ねられてきた知見を組み合わせることで、パラミロンは複数の健康課題に関わる“マルチ機能性素材”として、さらに進化する。
異なる視点からの知見を持つことは、研究の厚みや信頼性を高めることにもつながっていく。

さらに、ユーグレナはまだまだ未解明の部分も多く、現在活用されている用途はその一部にとどまる。今後、他の領域への展開も含め、ますます多くの可能性が検討されるだろう。
まずは食品など身近な製品への活用を広げることで、ユーグレナが日常の中に自然に存在する状態を目指している。その上で、多くの方の課題を解決する機能性素材として幅を広げ、継続的な利用を通じて価値を実感してもらいたいと願っている。

異なる知見が重なることで生まれる可能性を、どのように検証し、どのように社会の中で意味のある形として届けていくのか。
そのプロセス自体が、今回の取り組みのもう一つのポイントでもある。