ポルシファンデーション校と創設者の挑戦【2025年7月~9月の活動報告】

今回のレポートでは、GENKIプログラム提携校であるポルシファンデーション校が、困難に立ち向かうストーリーをご紹介します。 

1.子どもたちのために続く挑戦

首都ダッカのミルプール地区にある、スラムに暮らす子どもたちは、教育を受けるための環境が十分に整っていませんでした。慈善活動に熱心だったシャヒーナさんは、子どもたちの教育の機会が限られている状況を目の当たりにし、彼らの将来には教育が必要不可欠だと感じていました。そこで、2010年に「ポルシ財団」を通じてポルシファンデーション校を設立し、恵まれない子どもたちのための初等教育の場を提供し始めたのです。 

現在の先生たちと生徒たち 

当初は、わずか1名の先生、1名のボランティア、そして6名の生徒から始まりましたが、そこには子どもたちへの深い思いやりと、教育に対する強い信念が込められていました。 

やがて、取り組みは徐々に地域に広がり、学校は子どもたちが安心して学び、笑顔で過ごせる場へと成長していきます。近隣のスラム地域や経済的に困難な家庭からも多くの児童が集まり、在籍児童数は大幅に増加しました。2019年には、ポルシスクールはプレワンから5年生までを対象に、70人の生徒、4人の教師、4人のボランティアを抱えるまでに成長しました。子どもたちは無料で教材を受け取り、誕生日会や楽しいイベントに参加しました。学校は子どもたちにとってかけがえのない場所となったのです。 

2017年には、GENKIプログラムの対象校となり、子どもたちの栄養と健康を支える新たな取り組みが始まりました。これがきっかけとなり、出席率が改善し、教室には子どもたちの元気な笑顔があふれるようになりました。元生徒のアラミンさんは、「学校はまるで家庭のようでした。みんなが笑顔で学び、友だちや先生たちと楽しい時間を過ごすことができました。」と語っています。 

シャヒーナ校長先生と誕生日を祝う子どもたち(移転前) 
伝統的なイベントの様子(移転前) 

しかし2020年、世界的に蔓延した新型コロナウイルスの影響により、状況は一変します。寄付者たちは資金提供を減らし、ついには停止せざるを得なくなりました。そのような状況の中でも、シャヒーナ校長先生は諦めず、自身の貯金を切り崩して、学校の運営を支え続けました。それでも、しばらくして資金面の限界が訪れ、学校は整備された建物を離れ、簡素な造りのトタン造りの小さな建物へと移転することを余儀なくされました。 

この校舎の移転は、子どもたち、保護者、先生たち、そしてシャヒーナ校長先生にとって、精神的にも環境的にも大きな負担となりました。移転後の校舎は、トタン造りのため、夏は暑く、冬は寒く、雨の日には湿って冷たい環境になり、以前の快適で充実した学校での生活は維持できなくなりました。一部の保護者は、子どもを通わせることをためらうようになったり、コロナ禍の影響で別の場所へ引っ越したり、家計を支えるために生徒が働き始めるなどのケースも出たりした結果、生徒数は一時的に30名まで減少してしまいました。 

移転後の校舎(左) 
授業を教えるシャヒーナ校長先生 
移転後の校舎でユーグレナクッキーを配るシャヒーナ校長先生 
雨の日に登校する様子 

先生たちは、困難な状況が続く中でも、限られた資源を活用し、子どもたちが学ぶことの楽しさを感じられるよう、工夫を重ねながら日々の教育活動を続けています。シャヒーナ校長先生は、学校の存続のために、生徒たちの家庭を訪問し、保護者に対して通学の重要性を丁寧に説明し、協力を呼びかけました。その結果、現在では生徒数は62名まで回復しました。シャヒーナ校長先生は「子どもたちに学びを通じてより良い人生のチャンスを与えるためにこの学校を始めたので、諦めるわけにはいきません。資源は限られていても、私たちは挑戦し続けます。必要なのは、皆さんの理解と支援です。」と力強く語っています。 

シャヒーナ校長先生(右)、ボランティアの先生(左)と保護者たち 
保護者たちに教育の重要性を説明している様子 

5年生の娘を持つシマ・ベグムさんは「娘が未就園児クラスに通っていた頃、彼女にとって学校での時間は、かけがえのない特別な経験ができる時間でした。あの頃のような日々が、また戻ってきてほしいと願っています。」と話してくれました。 

シマ・ベグムさんの娘のシムラさん(5年生) 

困難な状況にもかかわらず、シャヒーナ校長先生は、子どもたちが安心して過ごせる環境への移転を目指し、より良い学びの場をつくるための準備を進めています。その一環として、デジタルツールの導入にも積極的に取り組んでいます。 

生徒たちの現在の様子
工作の授業の様子

この目標の実現のために、地域の企業との協力体制を築きながら、オンラインでの資金調達も進めています。ポルシ財団では他にも、女性の自立支援のための低コストのスキル開発プログラムや、食事の提供、古着の回収・配布など、地域と学校の両方に役立つ取り組みも行っています。 

その結果、地元の支援者による寄付やボランティアの参加が始まり、大学生たちが授業支援に加わるなど、少しずつ協力の輪が広がっています。今後は、企業や国際的な団体からの支援を得て、経済的に困難な状況にある子どもたちへのさらなる支援を目指しています。 

シャヒーナ校長先生は、地域の人々の善意と支援に支えられながら、ポルシファンデーション校を再び子どもたちの笑顔と笑い声があふれる場所にしたいという強い願いを持ち続けて、努力を続けています。 

2.2025年7-9月の活動報告

7-9月の3か月間は、GENKIプログラム対象校87校のうち、1日平均約10,270人に対し、合計64万食のユーグレナクッキーを配布しました。