バングラデシュの学校での食育セミナーについて 
【2018年8月の活動報告】

今期(2018年4月~9月)のユーグレナクッキー配布目標110万食に対し、8月までに約91万食(進捗率:83%)を配布しました。

1.学校での食育セミナー

GENKIプログラムでは、食育・衛生セミナーを継続的に実施しています。一般的にバングラデシュでは学校主体の食育セミナーは行われていません。しかし、7月にユーグレナクッキーの配布を開始したシュニケトン パスシャラ カリガンジ学校(Shuniketon Pathshala Kaliganj School)は毎週木曜日に学校主体の食育セミナーを実施しています。2014年から、栄養学の専門家よりトレーニングを受けた先生たちが食について子どもたちに教えています。また、栄養価の高い食品の説明や手洗い方法の指導などの具体的な内容が記された専門家が監修した資料を子どもたちに配布しています(写真-1) 。今回はこちらの学校の食育セミナーで実施された2つの具体例を紹介します。
 1つ目はワサビノキ(モリンガ)を使った栄養改善指導です。子どもたちの住居まわりにはワサビノキが植わっており、年中手にすることができます。ワサビノキにはビタミンA、B、タンパク質、鉄分などが豊富に含まれているため、もっとたくさん摂取するようお母さんたちに薦めています。葉をほうれん草のように茹でたり、野菜炒めとしてカレーと一緒にしたりする食べ方があります(写真-2) 。2つ目は食を通じた治療方法の指導です。喉の痛みなど風邪のひきはじめに、温かいハーブティーとしてとしてバジルを摂取することを薦めています。バジルには体を温め、抗菌する効果があります。ワサビノキと同様、バジルも自生しているためお金をかけずに取り入れることができます。先生たちはお母さんたちにもセミナーに参加していただき、家庭で積極的に実施していただけるよう働きかけています。
 現在は、これらの学校主体の食育セミナーに加えてGENKIプログラムでも、食育・衛生セミナーを実施しています。これらの食育・衛生セミナーを通じて、子どもたちの受講前の栄養状態、受講後の効果を数値化することが今後の課題です。10月からは、対象校の家庭実態調査を行って子どもたちの食生活を把握し、セミナー内容を改善する予定です。そして明確な効果が見える形での食育を進めていきます。

  • 写真-1:食育セミナーで使用している資料
    写真-1:食育セミナーで使用している資料
  • 写真-2:ワサビノキの摂取理由、方法を学ぶ子どもたち
    写真-2:ワサビノキの摂取理由、方法を学ぶ子どもたち

2.タスヌバちゃん家族の紹介

今月はダッカ市内にあるモヒラ ミッション女子校(Mohila Mission High School)に通うタスヌバちゃん家族を紹介します。GENKIプログラムは保育園に通う4-5歳の園児から8年生である12-14歳の子どもたちにユーグレナクッキーを配布しています。タスヌバちゃんは14歳でプログラム対象者の中では最年長です。
 家族は、お父さん、お母さん、2年生の妹、そしてタスヌバちゃんの4人です。以前はダッカから約200km離れている北部のジャマンプール県で暮らしていました。しかし2011年に発生した大洪水により家が崩壊し、仕事がある首都ダッカに引っ越しせざる得ない状況となりました。バングラデシュの国土は低地のため、洪水や高潮の影響を受けやすく、毎年大きな被害が発生しています。
 ダッカに引っ越し後、お父さんは建設現場で日雇い労働者として働いています。しかし数年前に心臓病を患い、現在は月に15日程度しか働けていません。お父さんの月収は約13,000円です。お母さんは、「パンジャビ」(写真-3) というバングラデシュの男性用の伝統服にボタンを付ける内職をしており、1枚で4円の収入を得ています。1日10枚にボタンを付け、毎月約1,200円を稼いでいます。スラム街の平均月収が約20,000円である中、タスヌバちゃん家族の世帯月収は約14,000円です。お母さんは近所の人たちからお米などの食料を分けてもらい、生活をやりくりしています。タスヌバちゃんは、お父さんの面倒を見たり、時にはお母さんの内職を手伝ったりするため学校を休むことがあります。ですが彼女は、日本でいう中学校卒業時の12年生までは学校に通いたいと願っています。卒業後はバングラデシュの主要産業である繊維工場で働き、約10,000円の月収を得ることが彼女の目標です。「今、妹は遠く離れたおじさん家族に面倒をみてもらっているの。家族が離れて暮らすのはとても寂しい。妹には毎日学校に行き、勉強をして友達と遊んでほしい。私と同じ思いはさせたくない。」と当社現地スタッフに話をしてくれました。

  • 写真-3:パンジャビ
    写真-3:パンジャビ
  • 写真-4:左からお父さん、タスヌバちゃん、お母さん
    写真-4:左からお父さん、タスヌバちゃん、お母さん

3.ムニール校長先生の紹介

8月にユーグレナクッキーの配布を開始したバカリア チャイルド ケア学校(Bakalia Childcare Academy)のムニール校長先生を紹介します。校長先生は食に対し特別な考えをもっています。それは彼の経歴が関係しています。ムニール校長先生は教育現場で働くかたわら、1978年に設立されたバングラデシュ消費者連盟に加盟し活動しています。連盟の主な目的は、ダッカを中心とした都市部の食の安全を守ることです。昨今、都市部では生活水準が向上したことで、様々な食品が流通していますが、その中には添加物や残留農薬を含む食品も多くあり、消費者の体に悪影響を与えています。消費者の健康を守るため、彼は他のメンバーと一緒に、安全な食の流通や正しい食品の表示など行政機関に制度作りの提言をしています。
 一方学校では、地元の有権者から寄付金を募り、朝食を十分に食べられない子どもたちへバナナやパンなどの軽食を提供していました。しかしこれらの軽食では栄養が不足しているため、栄養価の高い食事を探していました。そして当社現地スタッフからユーグレナクッキーの説明を受けたムニール校長先生は、ユーグレナクッキーが栄養価が高いだけではなく日本の高い品質基準に沿って作られた安全性の高いクッキーであることを知り、GENKIプログラムの導入を決めました。
 彼のモットーは「Good food is the first priority:良質な食事が最も大事」です。GENKIプログラムでは、良質なクッキーを配布するだけではなく、食育を含めた栄養改善プログラムを今後も提供していきます。

  • 写真-5:ムニール校長先生
    写真-5:ムニール校長先生
  • 写真-6:クッキーを受け取った子どもたち
    写真-6:クッキーを受け取った子どもたち

引き続きご支援をよろしくお願いいたします。

株式会社ユーグレナ
海外事業開発部 / バングラデシュ事務所