地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」が採択されてから5年が経った2020年12月、気候野心サミットで、国際連合のグテレス事務総長が各国首脳に対し、「気候の非常事態」を宣言するよう要請しました。日本の二酸化炭素排出量は世界5位。脱炭素が課題となる中、化石燃料の代替=代替燃料としてバイオ燃料の活用が期待されています。
今回は、そもそも「バイオ燃料」とは?そして、ユーグレナが取り組むバイオ燃料とはどういうものなのか説明します。

バイオ燃料とは

バイオ燃料とは、再生可能な生物資源(バイオマス)を原料にした代替燃料のことです。
バイオ燃料の代表的なものは
①ガソリンの代替となる「バイオエタノール」
②軽油の代替となる「バイオディーゼル燃料」
③ジェット燃料の代替となる「バイオジェット燃料」
④天然ガスの代替となる「バイオガス」
があります。

なぜバイオ燃料を使うと二酸化炭素の排出削減につながるの?

バイオ燃料は燃焼すると、石油などの化石燃料と同じように二酸化炭素を排出しますが、原料となる植物の成長過程において光合成を行うことで二酸化炭素を吸収しているため、燃焼時の二酸化炭素の排出量はプラスマイナスゼロとなると考えられています。これが「カーボンニュートラル」と呼ばれる概念です。

なぜバイオ燃料が必要となるのか?

資源には限りがあります。石炭や石油といった化石燃料は使い続ければいずれ枯渇してしまいます。また、化石燃料を使うと大気中に二酸化炭素が排出され続け、地球温暖化がどんどん進みます。しかし、私たちは日々、車に乗ったり、物を作ったりすることよって、二酸化炭素を排出しています。大気中の二酸化炭素の増加は地球温暖化の原因と言われています。地球が温暖化することで起こるリスクとして、海面上昇による高潮や沿岸部の洪水、台風の巨大化、干ばつによる食料不足、生態系の破壊、熱波による死亡や疾病などが挙げられます。これらの影響を受けるのは、子どもや弱い人たちであり、地球温暖化を放置すると未来の世代にとって大きな負の遺産となってしまいます。

例えてみるなら、今、起きていることは、「地球に近づいてきている隕石」のようなものです。隕石がどんどん近づいてきていて、今すぐではないけれど、いつかあるタイミングで地球に衝突することは認識している。これをどうやって地球に衝突しないようにするか、どのように止めるのか。地球温暖化という現象はまさに、これと類した危機なのです。

そんな地球温暖化を止めるためには、これまでよりもより地球に優しい技術・開発が求められます。そして、人の手で生産することができ、二酸化炭素の発生を抑えることができる新たなエネルギーの開発が必要で、まさにその1つがバイオ燃料なのです。

二酸化炭素を含む温室効果ガスの削減に向けた世界の動き

地球温暖化対策の国際的な枠組みとして、2015年に「パリ協定」が採択、翌年11月に発効しました。先進国・途上国関係なく、世界全体で温暖化対策を進めることに合意した初の協定です。世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて、2度低く、可能な限り1.5度に抑えるために、各国が温室効果ガス削減に取り組むことに合意し、目標を設定しました。

2015年に提出された当時の各国の削減目標の一部

しかし、2021年2月、国際連合が、「パリ協定のもとで各国の提出した温室効果ガスの削減目標が世界の気温の上昇を抑える上で不十分だ」として、日本を含む主要な排出国に対し、目標の強化を呼びかけました。なお、2020年末までに、イギリスとEU(ヨーロッパ連合)は排出量を「2030年までに、1990年に比べて少なくともイギリスが68%、EUが55%削減する」という新たな目標を提出しています。

日本は、新たな目標をパリ協定の国連会議「COP26」(2021年11月)までに報告する考えです。すでに、菅首相は、総理就任後、初の所信表明演説で、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることを目指し、「革新的なイノベーションを通じて、グリーン社会の実現に努力していく」と、脱炭素社会の実現へ向けて国を挙げて取り組むことを宣言。「バイオ燃料」への注目がより一層高まっています。

ユーグレナ社のバイオ燃料とは

使用済み食用油と微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の油脂等を原料に使用したバイオ燃料です。横浜市に2018年にできたバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントで製造されています。従来のバイオ燃料は、トウモロコシやサトウキビ、大豆、パームといった作物を主な原料とするため、食料との競合や、森林破壊にともなう温室効果ガスの増加といった問題がありましたが、ユーグレナ社の製造するバイオ燃料は、食料との競合や森林破壊といった問題を起こさず持続可能性に優れた燃料となることが期待されています。

原料となるユーグレナは、光合成によって成長し、体内に油脂を生成するという特徴を持っています。研究をしていくうちに、面積当たりの収穫油糧が極めて多いこと、さらにはユーグレナ社独自の屋外大量培養技術によって安定的に供給できる可能性があることが分かりました。培養に農地を使わないので、水と最適な場所さえ確保できれば効率よく油を作ることができます。

2020年3月からバイオディーゼル燃料が供給開始となり、2021年3月までに路線バスや配送車、消防車などの車両に導入され、さらにはフェリーやタグボートといった船舶にも導入が進んでいます。

次世代バイオディーゼル燃料はサステナブル

そもそもジェット燃料やガソリン、ディーゼル燃料などの液体燃料は、蓄電池や水素と比べてエネルギー密度が高いので、飛行機や長距離を走るトラックや、重量のあるバスなど輸送用に適していると言われています。同じ力のエネルギーを出そうとした時、液体燃料の方が体積が少なくてすむからです。また、従来の化石燃料と同じ液体燃料なので、今使っている供給インフラ(ガソリンスタンドやサービスステーション)や車両・船舶等を活用できます。つまり新たなインフラ整備にかかるコストが必要ないのです。このような優れた特徴を持つ液体燃料をカーボンニュートラル化することは脱炭素化にとって有効な手段となります。

従来のバイオディーゼル燃料と次世代バイオディーゼル燃料との比較

ユーグレナ社が作る次世代バイオディーゼル燃料は、品質は国内軽油規格に準拠しています。一般の化石燃料由来の軽油と同等の性能であることは、共同研究してきた、いすゞ自動車の性能試験(※全負荷性能試験とWHTC排出ガス試験)において確認しました。従来のバイオディーゼルでは5%までの混合燃料でしか使用できませんでしたが、ユーグレナバイオディーゼル燃料は化石由来の軽油を混ぜることなく、含有率100%でトラックやバス、船などディーゼルエンジンを使う乗り物に利用できます。もちろん、従来の供給インフラもそのまま使うことができるので、追加コストが不要で、導入が容易です。つまり、ユーグレナ社がつくる次世代バイオディーゼル燃料はサステナブルな燃料だということです。

説明/ユーグレナ執行役員・エネルギーカンパニー長 尾立維博

尾立維博(おだて これひこ)
株式会社ユーグレナ 執行役員 エネルギーカンパニー長

京都大学法学部卒。ニューヨーク大学スターン経営学大学院卒(MBA)。
1983年に武田薬品工業へ入社し、
主に化学品(ウレタン原料、合成ゴムラテックス)の営業に携わる。
1997年~2000年にはアジア・中東におけるウレタン原料販売基盤を構築。
2006年 三井化学へ転籍。同社として初めての長期経営計画策定、新規事業企画立案に携わる。
2012年にシェルケミカルズジャパン入社、
2014年シェルケミカルズジャパン代表取締役社長に就任。
2016年ユーグレナに入社し、現在に至る。