オンライン授業で算数好きを増やす!
【2022年10月の活動報告】

今月のGENKIレポートでは、オンライン授業を通して子どもたちの学力の向上に取り組んでいる、GENKIプログラムの対象校をご紹介します。

1.オンライン授業で算数好きを増やす!

首都ダッカに、OBATイングリッシュ校という、政府の教育カリキュラムを英語で教えるGENKIプログラムの対象校があります。同校は2008年に、NGO団体のOBATにより設立されました。現在、11名の教師のもと、409名の生徒が学んでいます。近隣にはジェノバキャンプと呼ばれるスラム街があり、主にウルドゥー語を話すビハール人(パキスタンからの独立時に無国籍となった少数民族の難民)が住んでいます。同校に通う生徒の多くはこのジェノバキャンプで暮らしています。

ジェノバキャンプのトイレ
キャンプ内を歩く同校の生徒

OBATのアンワー氏は、生涯にわたり必要な学力として、特に算数を重視しており、同校にも導入可能なユニークな教材を探していました。そんな時、カーンアカデミーという団体が、無料で利用できるオンライン授業を提供していると知り、早速使ってみることにしました。カーンアカデミーは、「場所に関わらず、すべての人へ、世界レベルの教育を無料で届けること」を目指す世界的な非営利団体です。バングラデシュでは、2020年初頭にオンライン授業の提供を開始しました。
同校は、2020年3月、アンワー氏の働きかけで、まず4台のパソコンで算数のオンライン授業を始めました。しかしその直後、バングラデシュで新型コロナウイルス感染症が拡大した結果、休校を余儀なくされました。教師たちは、自宅待機する子どもたちに、両親や友人のスマホを使ってオンライン授業を続けるように呼びかけましたが、全ての家庭がスマホを利用できるわけではなく、またインターネット接続がうまくいかないことも頻繁で、継続は簡単ではありませんでした。
1年半がたち、ようやく学校の再開が許されました。限られた時間の中でより多くの子どもたちがオンライン授業を受けられるよう、同校は寄付金を募って新たに4台のパソコンを買い足しました。合計8台になったパソコンで、3年生から5年生の合計250名がオンライン授業に参加しています。

パソコンを共有して、交替でオンライン授業を受ける子どもたち

現在では、1日8コマの時間割で、1コマの授業に8人が参加することで、1日に合計約60人の子どもたちが順番にオンライン授業を受けています。オンライン授業の他に、従来の教科書での授業も継続して、学力の向上を目指しています。

オンライン授業で数学の問題を解くソフナちゃん(4年生)。将来の夢はエンジニア。

設備が不十分な環境でのオンライン授業は簡単ではありません。インターネットが不安定で、時々接続が切れてしまうことがあります。また、最近は政府による計画停電の為、一層深刻になっています。学校には自家発電機がありますが、1時間しか給電できないため、長時間にわたる停電ではオンライン授業を続けられません。
一方で、オンライン授業によるメリットはたくさんあります。例えば、オンライン授業では、従来の座学では触れ合えないたくさんの動画や、生徒の身近にある物のイメージが数多く取り入れられているため、教科書と併用しながら、子どもたちがより楽しく、幅広く算数を学べるようになりました。

座学で使用している教科書(4年生)
(左)教科書には図形の描画   (右)オンライン授業では身近な物で形を分かりやすく
水槽の魚を使った問題
レンガと象を使った問題

また、ゲーム要素も取り入れられています。子どもたちが1つのレベルをクリアするごとに、スコアとご褒美のバッジを獲得することができるので、子どもたちの学習を継続する意欲をかきたてています。

各コースにおける達成スコアが表示
クリアするとバッジを獲得でき、プロフィール画面に表示される

先生たちは、「オンライン授業を通し、子ども達の中で”算数は難しい科目だ”という苦手意識から、”算数は面白い”という考えに変わったことは間違いありません。今では多くの子どもたちが算数を学びたがるようになりました。」と話しています。
同校に通う11歳のシャヒル君も、オンライン授業が大好きな生徒の一人です。シャヒル君は家族とジェノバキャンプで暮らしています。

左からシャヒル君の母親、妹、シャヒル君、父親。

元々、シャヒル君にとって算数は苦手科目でした。しかし、オンライン授業の動画で学び、たくさんの問題をゲーム感覚で解くことで、500点という同校の中で最高得点をたたき出すまでになりました。
シャヒル君は、「これまで算数は得意ではなく、テストでもあまりいい成績を収めることができませんでした。でも、オンライン授業が始まって、遊び感覚で問題をクリアしていくのがとても楽しくて、たくさん解くうちに、いつの間にか算数が得意になっていました。今では、難しい問題も自分で解けるようになり、友達にも教えてあげられるようになりました。勉強を続けて、将来は公務員になりたいです。」

学校でオンライン授業を受けるシャヒル君

ハリマ校長先生は、「シャヒル君は、以前は算数が嫌いで成績も好ましくありませんでした。しかし、オンライン授業を始めてから、成績がぐんと伸びました。シャヒル君のような子どもが他にもいます。こうした子どもたちの学力向上は、オンライン授業の成果です。算数の能力を向上させることで、論理的思考力も養い、将来に役立ててほしいです。引き続き取り組みを継続していきたいです。」と話しています。

ハリマ校長先生と子どもたち

GENKIプログラムでは、同校を引き続き支援して参ります。

2.2022年10月の活動報告

10月はGENKIプログラム対象校106校のうち、95校の約9,200人に対し、21.3万食のユーグレナクッキーを配布しました。
2022年度の配布目標240万食に対して10月末時点で、累計208.8万食を配布しています。