ユーグレナ社は、ミシュランガイド東京2020~2022 一つ星掲載店「sio」オーナーシェフ鳥羽周作さんをコーポレートシェフに迎え、『ユーグレナ あとはおいしくするだけプロジェクト』を2021年に発足。59種類の豊富な栄養素をもつスーパーフード「石垣島ユーグレナ」の“うま味”の可能性に注目し、既存製品を活用したレシピ開発や新製品開発などに取り組んでいます。

このプロジェクトをともに推進するのは、鳥羽さんが「絶対的に信頼できる相手」と話すユーグレナ社の取締役代表執行役員 CEO・永田暁彦。
固い絆で結ばれた友人同士でもある2人が、プロジェクトにかける思いを語り合いました。

「5味+1」で見出したユーグレナの可能性

永田:鳥羽さんが初めてユーグレナ商品を食べたときの感想を教えてください。

鳥羽:想像していた以上においしかったです。ただ、同時に、料理の材料として使うのは簡単じゃないな、とも感じました。試しに、カレーを作る際に多めにユーグレナを入れたら、思っていた味と違うカレーになってしまって。笑

永田:最初は厳しい印象もあったんですね。それでも鳥羽さんはユーグレナを使った料理を作り続けている。レストランって、「おいしいか、おいしくないか」が命じゃないですか。そんな現場で料理の材料として簡単じゃないと感じたユーグレナを入れてもいいと思った理由は?

鳥羽:僕は、おいしさのロジックを言語化して「5味+1」と表現しているんですね。5味とは味覚を構成する「甘味、塩味、酸味、苦味、うま味」の要素のこと。そして+1は、香りや刺激や食感など。おいしさをロジックで考えれば、たとえば単体では苦すぎるコーヒーを甘いシフォンケーキと組み合わせるなど、うまくバランスを取ってメニューを提供できるんです。ユーグレナには特徴的なフレーバーがあるけど、甘いトロピカルフルーツなどと組み合わせれば、互いの食材のポテンシャルを引き出せると思っています。ユーグレナには大きな可能性がありますよ。

永田と鳥羽の対談の様子

永田:味覚を進化させるコツも「ロジック」にあるんですか?

鳥羽:はい。たとえば大手チェーンのハンバーガーを食べると、だいたい3口目くらいにピクルスと出会う。「この酸味はなぜおいしいのか?」などを考えながら、ロジックを上手に取り入れ、集中して食べるようにすれば、味覚も磨かれていくと思います。

永田:適当に音楽を聞き流していると分からないけど、集中して聴けばベースラインが分かるみたいな。

鳥羽:そうそう。他にも例を挙げれば、お寿司屋さんに行くと大トロの後にコハダが出てくることが多いんですね。なぜかというと、大トロの脂っこさの後ならコハダの酸味を一層おいしく感じられるから。こうしたロジックを理解すると面白いですよ。

永田:料理は必ず人間が作っている。その作り手の意図や思いを想像することにもつながりますね。

ユーグレナを、おいしくて健康になれる食材にしたい

永田:僕たちは『ユーグレナ あとはおいしくするだけプロジェクト』を通じて、ユーグレナを国民食にしていきたいと思っています。実際にユーグレナが国民食になっている状況をイメージするとしたら?

鳥羽:考えているのは「めんつゆ」のような存在です。甘みを生かして煮物に活用できるような調味料。あるいは「味噌」のような発酵系の調味料とか。

永田:日常的に料理を支えてくれる存在ですね。僕は「おいしくて、健康になれる」ことが大事だと思うんです。「そんなにおいしくはないけど、体にいいから食べましょう」では限界があるじゃないですか。

ユーグレナを手に持ち話をする永田

鳥羽:うん。身近な調味料として、日常で「ちょっとユーグレナを入れるとおいしくなる」みたいな食材になるといいですね。あとは飲み物としても可能性があると思うんです。たとえば乳酸菌飲料の有名商品には、今では認知度が97%に達すると言われるブランドもある。これはまさに国民食と言えますよね。

永田:乳酸菌飲料というカテゴリの中で強いブランドがあるから、僕たちはその名前を聞けば乳酸菌飲料の味を想起できますよね。そうした商品作りを実現するのは、調理の力なんでしょうか?

鳥羽:いえ、調理ではなく「調味」ですね。味で食べさせるのは調味。それがユーグレナに合っていると思います。理想はコンビニの売り場にいろいろな種類のユーグレナ商品が並んでいる状態。たくさんの人に届けられるようにしたいですよね。

コロナ禍で「キャンセル料0円」にした理由

永田:ところで、僕は鳥羽さんと出会って仲良くなったときのことを強烈に覚えているんですよ。初めて鳥羽さんの店に食べに行き、「多くの飲食店でオーナーがシェフを搾取している構造は許せない、解決しよう!」と話し合って。

鳥羽:店の真ん中で、2人で盛り上がりましたね。笑

永田:なぜ強く印象に残っているかというと、これは僕が大切にしているサステナビリティにつながるからなんです。僕はサステナビリティを「二項対立じゃないこと」と定義しているんです。つまり、他者の幸せと自分の幸せが共存している状態。これは社会全体でも同様で、「経済発展するけど環境も守る」「会社が大きくなると働く人も幸せになる」「先進国が発展すれば開発途上国も発展する」といったように、どちらかが損をしない状態にすることがサステナビリティだと思っています。

ユーグレナ社はフィロソフィーに「サステナビリティ・ファースト」を掲げている

鳥羽:飲食業界では未だに、薄給で仕事がきついという理由で辞めていく人が少なくありません。これはサステナビリティではないですよね。そういえば、最近お客さまとの関係でも同じことを考えたんですよ。コロナ禍で社会情勢がコロコロと変わるなか、予約のお客さまから急なキャンセルの相談が来ることも増えて。

飲食業界について語る鳥羽

永田:やむを得ない面もありますよね。

鳥羽:そう思います。だけど多くのお客さまは、本当に申し訳なさそうに「キャンセル料を払いますから……」と言ってくださるんですね。でも僕は、これっておかしいと感じたんです。お客さまはやむを得ない状況でキャンセルするしかないんだから、店側がキャンセル料を取る必要なんてない。そう思った瞬間にTwitterで「うちはキャンセル料をいただきません」と告知しました。

鳥羽のツイート。コロナ禍では、sio全店においてキャンセル料を頂かないことを発表した。
実際のツイート

永田:本当に鳥羽さんらしい考えだなと思います。同時に「よくやれるなぁ」とも。コロナ禍では大手商業施設がテナント料を免除しているという話もありましたが、それは巨大な資本力があるからこそできるわけじゃないですか。でも鳥羽さんはそうじゃない。

鳥羽:そうですよ。下手をすると店が潰れちゃうかもしれない。でも僕たちはその前に、お客さまがいないと商売自体続けられませんから。どれだけお客さま目線になれるかがすべて。

永田:目の前の損を取って、長期的な得を得ているということかもしれませんね。

後編につづく

鳥羽周作さんのプロフィール写真
鳥羽周作(とば しゅうさく)
sio株式会社 / シズる株式会社 代表取締役
J リーグの練習生、小学校の教員を経て、31 歳で料理の世界へ。
2018年「sio」をオープン。
同店はミシュランガイド東京 2020 から 3 年連続一つ星を獲得。
現在、「sio」「Hotel’s」「o/sio」「o/sio FUKUOKA」「パーラー大箸」「㐂つね」「ザ・ニューワールド」「おいしいパスタ」と8店舗を展開。
書籍 / YouTube / SNSなどで公開するレシピや、フードプロデュースなど、レストランの枠を超えて様々な手段で「おいしい」を届けている。
モットーは「幸せの分母を増やす」。
2021年、株式会社ユーグレナのコーポレートシェフに就任。
永田暁彦のプロフィール写真
永田暁彦(ながた あきひこ)
株式会社ユーグレナ 取締役代表執行役員 CEO
リアルテックホールディングス株式会社 代表取締役
慶応義塾大学商学部卒。
独立系プライベート・エクイティファンドに入社し、プライベート・エクイティ部門とコンサルティング部門に所属。
2008年にユーグレナ社の取締役に就任。
ユーグレナ社の未上場期より事業戦略、M&A、資金調達、資本提携、広報・IR、管理部門を管轄。
技術を支える戦略、ファイナンス分野に精通。
ユーグレナ社の食品から燃料、研究開発など全ての事業執行を務めるとともに、日本最大級の技術系VC「リアルテックファンド」の代表を務める。

文/多田慎介