euglena Project

04

煙突から排出されるCO2
ユーグレナを培養せよ。

火力発電所由来の排ガス利用

2008.08 – 2009.02

完了

微細藻類ユーグレナの可能性を実証する

2008年の新卒として入社した嵐田は、入社間もなくしていまだかつて行われたことがない研究、“火力発電所の排ガスでユーグレナを培養すること”に挑もうとしていた。

ある日、社外でユーグレナの可能性についてプレゼンテーションしていた研究開発担当の取締役(当時)・鈴木健吾と嵐田は、参加者より投げかけられた質問に対する答えに窮した。
「実際に火力発電所の排ガスでユーグレナを培養することができますか?」

微細藻類ユーグレナ研究の第一人者である中野長久教授の論文によると、ユーグレナは優れた光合成能力を持ち、15~20%の高濃度のCO2でも吸収することができる(中野教授ら, 1995)*。つまり、15%前後のCO2が含まれている一般的な火力発電所の排ガスを使ってユーグレナを培養すれば、環境へのCO2排出量の削減につながることが示唆されていたのである。
しかし、火力発電所の排ガスに含まれる成分はCO2だけではない。窒素酸化物、硫黄酸化物等も含まれているため、CO2以外の成分の影響でユーグレナを培養できない可能性があるのではないかとの懸念が頭をよぎり、自信を持って「培養できる」とは言い切れなかったのだ。研究室に戻った鈴木が口を開いた。「環境の改善にユーグレナが役立つと胸を張って答えられるようにするには、実証するしかないですね・・・」

その時だ。
「僕にやらせてください」
嵐田は、新卒1年目にして“火力発電所の排ガスでユーグレナを培養する”プロジェクトに志願したのだ。鈴木は、入社して間もない嵐田の背中を押した。
「嵐田さん・・・やってみてください!」

鈴木や社内の仲間たちからの期待を背に、嵐田はこのプロジェクトを担当することになった。そして実証実験は、沖縄電力株式会社の協力のもと、金武火力発電所にて行うことになった。

与えられた時間は実質1か月

2009年の年明けを迎えた嵐田は焦っていた。
現地での関係各社のスケジュールの都合上、火力発電所の排ガスでユーグレナを培養する実証実験にかけられる時間が実質1ヶ月しかなく、事前の予備実験の結果も芳しくなかったためだ。しかも、実証実験の準備を進める過程でも、追い打ちをかけるように次々と想定していなかった問題が発生した。

沖縄とはいえ1月の気温は低く、水温がユーグレナの培養には適さないほど低くなってしまい、急きょ培養液を加温できる設備の導入に奔走することになった。また、排ガスを培養槽に通気する装置では、寒さで排ガスが急激に冷やされてしまうことにより発生した結露が配管に詰まり、排ガスを通気するファンが止まってしまうトラブルが発生した。

焦りとプレッシャーに何度も押しつぶされそうになったが、研究と仲間のことを考えるとあきらめるわけにはいかなかった。
改めて心に誓い、トラブルの対策に奔走した。
「絶対に、このプロジェクトを成功させる」

  • 装置の確認をする嵐田

  • 火力発電所の排ガスを使った実証実験装置

そして、ようやく火力発電所の排ガスを使った実証試験の初日になった。事前に検討を重ねてきた培養液や培養条件を調整し、3週間培養したユーグレナが含まれる10リットルの培養液を培養槽に投入した。
「できることは全部やったはずだ」
そう自分に言い聞かせても、その日の夜は眠れなかった。

実証実験2日目、祈るような気持ちで発電所に向かった。

「昨日より緑色が濃くなっている・・・!」
培養液を持ち帰り、濃度の測定、顕微鏡による細胞数の測定でもユーグレナが増えていることを確認した嵐田は、この実験が始まって初めて安堵のため息をついた。

排ガス通気実験1週目におけるユーグレナ培養槽内の様子(左:培養開始直後、右:培養終了時)

その後ユーグレナは順調に増えていき、この実験で火力発電所の排ガスを通気してもユーグレナは増殖可能であることが実証できた。すなわち、窒素酸化物、硫黄酸化物等の成分によってユーグレナを死滅させずに培養することは可能であったのだ。

なお、空気のみを通気して培養した4週目の実験では、ユーグレナを捕食するワムシと呼ばれる原生動物が発生しユーグレナの数は減少してしまい、この結果より排ガスの通気は原生動物の増殖を抑えてユーグレナのみが増殖できる環境を作り出すという効果も確認することができた。

新卒1年目で誰も成し遂げたことがない実験に挑戦したプレッシャーは大きかったが、嵐田はそんな自分を挑戦させてくれた鈴木や仲間たちに心から感謝した。そしてすべての実験を終え、「ユーグレナを環境技術に活用する」という新しい用途と未来に、一層情熱を抱くのだった。

*中野長久(1995)「Euglena gracilisの高CO2環境への適応とその機構」CELSS学会誌 7(2), p15-18

euglena Data

~光合成のしくみ~

euglena Projects

vol.00

バングラデシュの子どもたちを
救う素材を探せ。

vol.01

誰もなし得ていない、ユーグレナの
屋外大量培養技術を確立せよ。

vol.02

ユーグレナを
300億円市場に育て上げよ。

vol.03

バングラデシュの
全ての小学校に給食を。

vol.04

煙突から排出されるCO2
ユーグレナを培養せよ。

vol.05

ユーグレナの化粧品事業を
立ち上げよ。

vol.06

日本初のバイオジェット燃料
製造プラントを建設せよ。

vol.07

「ミドリムシ」の名前を
武器にせよ。

vol.08

中国にユーグレナを
普及せよ。

vol.09

スーパーユーグレナを
獲得せよ。

vol.10

バングラデシュの
貧困問題を
緑豆事業で解決せよ。

vol.11

ユーグレナでタケダと
新商品を開発せよ。

vol.12

下水処理場の下水を活用し、
ユーグレナを培養せよ。

vol.13

ユーグレナの仲間の
「行動指針」を作成せよ。

vol.14

日本独自の技術で、
ユーグレナを培養せよ。

vol.15

仲間がより働きやすい
オフィスを追求せよ。

vol.16

ゆーぐりん保育園を
オフィスに併設せよ。

vol.17

ユーグレナで石垣島の
地域活性化に貢献せよ。

vol.18

ユーグレナの認知度を上げる
新商品を共同開発せよ

vol.19

ユーグレナのカフェを
石垣島で開店せよ。

vol.20

ユーグレナを飼料にして
比内地鶏を育成せよ。

vol.21

ユーグレナ入りディーゼル燃料を
いすゞ自動車と共同で実用化せよ。

vol.22

ユーグレナを使った
バイオ燃料を生産せよ。

vol.23

研究系ベンチャーを
ヒト、モノ、カネで支える
新しいファンドを確立せよ。

©2018 MELTIN MMI

vol.24

ユーグレナとクロレラで世界初の
ASC-MSC藻類認証を取得せよ。

vol.25

グループ企業との
シナジーを構築せよ。

vol.26

新しい仲間と、
遺伝子レベルで人を健康にせよ。

vol.27

自由が丘と
ユーグレナを普及せよ。

vol.28

ユーグレナサプリメントの
加工工場を立ち上げよ。

vol.29

理科のチカラで石垣島の
地域活性に貢献せよ。

vol.30

新しいユーグレナの
基幹化粧品を開発せよ。

vol.31

ロヒンギャ難民の
食料問題解決に貢献せよ。

vol.32

ユーグレナ由来の美容成分を
研究解明せよ。

vol.33

学生のチャレンジを応援!
通年採用を開始せよ。

vol.34

ユーグレナとクロレラで
ハラール認証を取得せよ。

vol.35

健康寿命を伸ばすユーグレナの
可能性を発見せよ。

vol.36

竹富島のクルマエビ養殖事業を
発展させよ。

vol.37

「G20軽井沢」にてユーグレナバイオディーゼル燃料で自動車を走らせよ。

vol.38

石垣島ユーグレナの魅力を伝えるキャラクターを企画せよ。

vol.39

CFO(最高未来責任者)を募集・選考せよ。

vol.40

国産カラハリスイカを
栽培せよ。

vol.41

日本初となる「バーチャルオンリー
株主総会」を開催せよ。

vol.42

次世代バイオディーゼル燃料を
普及させよ。

vol.43

コーポレート・
アイデンティティを刷新せよ。

vol.44

石垣島生まれの
ユーグレナを浸透させよ。

vol.45

ユーグレナ由来の
肥料研究を加速させよ。

vol.46

日本の空をバイオ燃料で
クリーンにせよ。

vol.47

オフィス環境を改善し、
仲間の生産性を向上させよ。

vol.48

化粧品における
サステナビリティを追求せよ

vol.49

次の新素材「ミドリ麹」の
価値を世に拡げよ。

vol.50

ユーグレナの
ESG経営を加速させよ

vol.51

未来世代アドバイザリーボードを
設置せよ。