LIFE

光のある場所

2022.05.01

自分自身がニュートラルでいられる場所や時間についてお話を伺う “LIFE”インタビューの、今回のゲストは「archi」ディレクターの一色紗英さん。
心落ち着ける場所、自分に戻れる場所や時間について伺っていきます

心地よい場所には、いつも会いたい人がいて

一色さんが葉山で好きな場所を教えてくださいとお願いすると、意外な場所が返ってきました。
「私の妹のような存在で、小さいときから一緒に育った従姉妹、藤井愛の家です。ここにくるとなんだかホッとする。この家は山の上に建っていて、遠くに海が見えて、風が抜けていくのがわかります。惜しみない太陽の光が入ってきて、自宅みたいにくつろいじゃう。そこかしこに愛によって活けられた花があって、可憐な容姿で浄化してくれています。空間はそこに居る人の気配や、住まい方で変わって見えるもの。愛自身と、彼女の家族の温もりあるセンスと、大切にしているものを感じられる空間が心地よいのだと思います」

一色さんにとって藤井愛さんはどんな存在なのでしょう。

「小さい頃から、私がお姉さんで愛が妹のように育ちました。冒険好きで何に対しても恐れを感じず行動してしまう私に、愛は純真なままくっついて来てくれて、疑いもせずに何でも真似していました。彼女を守らなきゃ、という姉としての責任感というか正義感からか、叱咤したこともあります。愛は私をお母さんみたいだったと言ってますね(笑)。そしていつの間にか、生活の根本を形作る価値観を共有する関係に。彼女が出産するときも、私がトライした自然分娩に共感してくれて、宇宙の根っこと繋がるような、彼女らしい出産をしていました。現在は薬膳を学び、講師になって自分の興味や関心を深めていて、コツコツと自己実現をして来たんだなと感じます。彼女は自分自身を内観して実感を得ていくタイプなのに対して、私は自然の中へ出て体感し実感を得ていくタイプ。陰と陽だからこそ、お互いの存在の中に自分を省みるような気がするのです」

温かい飲み物は滅多に飲まないという一色さんも、従姉妹の愛さんが淹れる温かいお茶は特別に美味しいんです、と話す
山と同じ目線に建つ藤井さんのご自宅には、暖かな光が差し、心地よい風が通る

藤井愛さん
中医薬膳営養師。中医学をベースに、季節や体調に合わせたさまざまな薬膳ワークショップを行い、変化しやすい女性の心身を暮らしのなかの身近なところからサポートする。「five tast of study」主催。https://five-tastes-of-study.com

いつも、光ばかりを見てしまう

一色さんが話し出すと、辺りが暖かい光に照らされていくようで眩(まばゆ)い。内面から放つ輝きは、どんな場所や空間に支えられているのでしょう。

「基本的に気持ちよいと感じることに、特別なルールや理由はありません。ただ、心地よい場所を察知するのは早いかな。光がある場所が好きです。ロサンゼルスの自宅もたくさん気持ちよい光が入りますが、自宅近くにある丘の上にとっても好きな場所があります。ベンチに腰掛けて、ぼーっと光を眺めて過ごします。丘のような見通しがよいところにいると、視界が開けていく感覚があるのかもしれません」

一色さんの自然体な価値観は、もともと備わっていた感覚なのでしょうか。

「幼い頃から木登りや屋上など、高いところが大好きで、いつも駆け上がって上からの景色を楽しんでいました。地図を読むのも大好きでした。その土地が一体どんな地形をしているのだろう?と思いめぐらせます。まるで野生動物みたいですね。ネイティブアメリカンの哲学を綴った『イーグルに訊け』という私のバイブルがあるのですが、俯瞰した視点を持つこと、すなわち “イーグルの視点”を教えてくれました。忘れがちだけど、自然とは本来全てが形を変えて移り変わっていて、全体のバランスの中で息づいているもの。私の中にもともとある感覚が教えてくれていること、それは自然のめぐりの中で生きているのだよ、ということなのです」

アメリカの自宅近くにあるという、気持ちのよい光が差す丘

歳を重ねていくことは、進化していくこと

実際に自然の中で過ごすこと以外に、自身のめぐりを良くすることで心がけていることはありますか?

「あるがままを受け止めること、かな。若くありたいとか、今よりもっと白い歯でいたいと思わないわけではありませんが、歳を重ねていくことそのものが、それだけ経験と知識が蓄積されていくことだから、誇らしいこと。だから、老化を老いていく事として嘆くのではなくて、進化だと捉えて肯定していたいと思います。何事も自然本位として受け止める、のではなく、受け入れる。子どもたちにも言うのですが、どんな風に思っていてもいいから、ママの声かけに「うん」じゃなくて「はい」って言ってみて、って。「うん」は、喉のあたりで、気持ちを止めてしまうのです。「はい」と言うことで、気が流れて循環が生まれだす。そんな日常の些細なことから、めぐりが始まっていくのだと思います」

Sae Isshiki

10代から女優として活躍後、旅を経て自身がディレクションする 「archi」をスタート、今年で23年目を迎える。3児の母。冬はバックカントリー、夏はサーフィンを愛し、自然と都市を行き来しながら活動を続ける。その自然体の生き方に、多くの共感と憧れが寄せられる存在。

http://www.archi.nu
Instagram : @this_is_sae / @archi_gibbous

Photographies by Yoshiyuki Nagatomo

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