DAILY

毎日の中に大自然があること

2022.05.01

お気に入りのアイテムや習慣など日々の喜びについて伺う“DAILY”インタビューの、今回のゲストは「archi(アーキ)」ディレクターの一色紗英さん。太陽のように笑う一色さんの日々の中で欠かせないのが、バックカントリーとサーフィン。常に自然を身近に感じていたい、その衝動は一体どこから来るのでしょう?そして、自然界への冒険に連れ立つ道具をどんなふうに選んでいるのでしょう?メンテナンスや道具選びの習慣についても、お話を伺いました。

思い立ったら車を飛ばして、山へ、海へ
まるで鳥のような軽やかさで自然の中へ飛んでいく

子育てがひと段落してきたここ最近は、忙しい日々の中でも、山や海へフットワーク軽く出かけているという一色さん。吸い込まれるように自然の中へと飛び出していきたい衝動は一体どこからくるのでしょう?

「その日、子どもたちを送り出して雪が良さそうだったら、よしっ今から山へ行こう、と車を2〜3時間走らせて雪山に向かうことは頻繁にあります。夕方、子どもたちから、ママ今日も行ったの!?と(笑)。冬はバックカントリー、夏は海へ移行し、ロングボードをやります。どちらも自然が遊び相手という点が似ているかな。風のよい日は打ち合わせをしていても、波の様子が気になってそわそわし始めて。全く集中できないので、波休憩を挟んで海へ飛んでいきます」

アメリカでの生活にも、サーフィンが欠かせなかったという一色さん

目を輝かせながら、夢中で話す一色さんはまるで少年のよう。今、魅了されているバックカントリーについて伺ってみました。

「リフトなどを使わずに自力で装備を背負って、山を上がっていくところからスタートするバックカントリーは、自然のままの地形を滑ります。ノートラックのパウダーランでは、全身で地形のラインを縁取るように滑って行きます。沢や地面のなだらかな盛り上がり、木々の根の様子、山の起伏を感じ、風や空の近さを感じながら、降ったばかりの雪の結晶が舞う美しさをみることができます。パウダーに板を浮かせながら滑ると、無重力状態を感じる瞬間があり、宇宙と一体化する瞬間というか、抗わず存在の自由な道を行く。それを私は『タオ』と呼んでいます。ゲレンデを滑るスノーボードでは、味わえない感覚だと思っていて、山へのアプローチも違います。雄大な大自然の傾斜を目に前に、自分の強さと弱さと向き合い、ギリギリまでエゴが削ぎ落とされたときの自分は、完全に子どもに返っていますね。そして、その環境の中で、自然を味方につけ自分がどこまで勇しくいられるか試したくなる。山は心を養う場所、そして自分自身を内観させてくれる場所なのです」

自力で登り、自然のままの地形を滑るバックカントリー

自分の身近にあるモノの基準

そんな一色さんが選ぶモノや日常の習慣は、どんな審美眼で選ばれているのでしょう。

「基本的に山や海へ出かける前提なので、探し求めるものは道具ばかり。機動力のある車、ボード、ボードをメンテナンスする道具…、おじさんみたいだね(笑)。ボードはワックスを入れて丁寧にブラシで磨いていきます。道具をそんな風に愛でている時間が楽しいし、自分のスキルと目指すスタイルが、板に馴染んできたときの喜びは大きい。ギアの機能は進化していますが、板はどちらかというとクラシックなものが好みで、サーフィンならロングボード、スノーボードならフラットキャンバー。古典的なものには情緒があって、たとえ扱いが難しくても、それだけ自然をダイレクトに感じることができると思います。ギアに関わらず、普段からモノを選ぶときは、誰が作ったかわかるような生産背景にストーリーのあるもの、経年変化を楽しめるようなものが多いですね。でも、物質的に満たされた状態より、今ここにある時間や、波だったり雪に価値を感じています」

作り手のストーリーや、経年変化を楽しめるモノを旅で買い付け、 自身がディレクションするブランド「archi」で展開することも

習慣は自分で作る

特に大切にしているモノは何ですか?と聞いてみました。
「出来るだけシンプルに暮らしていたいので、家の中に極力モノは増やさない。旅に出るときもいつも身軽です。モノに執着はないので、大切なものと聞かれたら“歯”って答えます(笑)。食事をすることが健康の基礎になるのはもちろん、私とても甘いものが好きなのです。いくつになってもしっかり噛んで好きなもの食べていたいですから。歳を重ね、振り返れば今が一番若い、そう心がけています。ジムに通うような意識的な力みではなくて、日常的に海と山で身体を動かしているので、ヨガやピラティスなどはやりません。自分の身体を使って大自然の中で進化に目を向けていく方が性にあっています。身体の中からリセットできる時間として、源泉掛け流しのお湯に浸かることも大好き。なにより、温泉は源泉であることが重要です。塩素で消毒し、循環ボイラーの中を通ってくるお湯では身体が喜ばない。何事もエネルギーワークだと思っています。モノが持つ波動が今の自分にどう作用するか、目に見えないけどエネルギーは働いているので、とてもシンプルなことです」

Sae Isshiki

10代から女優として活躍後、旅を経て自身がディレクションする 「archi」をスタート、今年で23年目を迎える。3児の母。冬はバックカントリー、夏はサーフィンを愛し、自然と都市を行き来しながら活動を続ける。その自然体の生き方に、多くの共感と憧れが寄せられる存在。

http://www.archi.nu  Instagram: @this_is_sae@archi_gibbous 

Photographies by Yoshiyuki Nagatomo

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