現在、環境に優しいと多くの人が思っているこの国は、重大なCO₂排出の問題を抱えている。その事実に多くの人が気づいていないこの国はもはや「環境後進国」だ――。

この課題にバイオジェット燃料の開発で挑むユーグレナ社の取締役副社長の永田暁彦がその意気込みと展望について語ります。

いつから地球は大変じゃなくなったのか

私は小学生だった頃、今よりもっと「地球が大変だ」と感じていました。
社会の教科書に載っていたフロンガスによるオゾン層の破壊の事実は、まるで自分のクラスで起きた問題のように感じていましたし、CO₂による地球温暖化は、テレビにしょっちゅう流れていた、氷が溶けて住処を追われる北極圏のホッキョクグマの映像が今でも記憶に焼き付いています。

現在よりも昔の方が、もっと多くの人が環境問題を「人類の宿題」として、身近に感じていたんじゃないでしょうか?さらに言うと、日本は環境に優しい国で、「地球が大変だ」と思わなくなっている人すらいるんじゃないでしょうか? 

今の日本は、エネルギーに関して深刻な問題を抱えています。
日本はCO₂排出の抑制策として、電力エネルギーを原子力発電に頼ってきた歴史があります。しかし「3.11」以降、日本は原子力発電所を停止する選択をしつつある。
一見良いことのように思えるのですが、その結果として日本は、電力エネルギーを火力発電に依存せざるを得なくなり、現在のCO₂の排出量は、人知れず増加しているのです。そしてCO₂の増加に起因する地球規模の環境問題は悪化の一途をたどっています。つまり地球は現在もずっと、大変なままなのです。そして日本は、ことCO₂の排出に関しては、問題の加担者です。

火力発電(イメージ)


この状況を前にして、子どもの頃の教科書に載っていた人類の宿題を、大人になった私たちは本当にやっているんでしょうか?忘れたままで、なんとなく今日と同じ未来が、明日も、来年も、10年後もやってくると思っているんじゃないでしょうか?
そんな未来は決して訪れません。私たちがあの宿題をやる、つまりすぐに行動を起こすまでは。

日本は「環境後進国」になりつつある

私たちユーグレナ社は今、CO₂の排出抑制を自分たちがやるべき人類の宿題と位置づけ、ミドリムシによるバイオジェット燃料の開発で挑戦をしています。

あまり広く知られていませんが、地球上のモビリティにおけるCO₂排出量の主要な“稼ぎ手”は飛行機などのジェット輸送機です。
輸送機の運行機数は最近の30年間で約3倍超に増加し、航空旅客者数は20年間で約3倍、中でも最大の伸び率を持つアジアは4.4倍の増加です。

出典:JADC “航空輸送の推移と現状”より当社作成


動植物は生み出したエネルギーを糖質か脂質で蓄えます。動物と植物両方の特徴を持つミドリムシは光合成によって生み出したエネルギーを脂質で蓄えます。
これが良質なジェット燃料として活用できることを私たちは発見し、2010年5月より研究開発を開始しています。こうしたバイオ燃料はもちろん燃焼時にCO₂を発生しますが、「カーボンニュートラル(※)」であり、地球環境に優しい特徴を持っています。

私たちは年間売上の約半分を投じ、日本初となる「バイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラント」を設立しており、2019年春から本格稼働する予定です。
計画では、2020年までにプラントで製造した国産バイオジェット燃料での有償飛行(一般的なフライトへの導入)を実現します。そして2025年には2000倍の大規模生産を実現する商業プラントを生み出し、2030年の産業化を実現したいと考えています。

しかし実は、私たちは新しいことをやっているわけではありません。この地図を見てください。

https://planefinder.net/custom/icao-fuel より (2018.10.30)


この地図は、世界中の現在航行中の飛行機のリアルタイムマップを表示するサービス「planefinder.net」を使って、現在の地球上空で、バイオジェット燃料によって有償飛行をしている飛行機だけを表示させたものです。

すでにバイオジェット燃料で飛行機は飛んでいるのです。つまり、世界のエネルギー産業の一部は、すでにこの人類の宿題の重要性に気づき、取り組みを始めているのです。
しかし日本の上空を見てください。一機も飛んでいないですよね。その国で私たちのような、一切航空産業と関係のない“ミドリムシ産業”が立ち上がり、しかもバイオジェット燃料の航空機導入では後発であるというのはどういうことなのかを、先進国に生きる日本人は考える必要があると思うのです。

多くの人が環境面でも先進国だと思っているのとは裏腹に、日本は今「環境後進国」になりつつあると私は感じています。

※もともとが現在の地球上に生息している植物であるため、ジェット燃料として使用するなどの人為的な操作をしても、その CO₂ の発生量と、生成時において自然によって吸収される量が同量になるという考え方。

~次回に続く~

文:森 旭彦

株式会社ユーグレナ 取締役副社長/リアルテックファンド 代表
永田 暁彦(ながた あきひこ)


慶応義塾大学商学部卒。独立系プライベートエクイティファンドに入社し、プライベート・エクイティ部門とコンサルティング部門に所属。
2008年にユーグレナ社の取締役に就任し、ユーグレナ社の未上場期より事業戦略、M&A、資金調達、資本提携、広報・IR、管理部門を管轄。技術を支える戦略、ファイナンス分野に精通しユーグレナ社の財務、戦略およびバイオ燃料などの事業開発責任者を担当。現在は副社長に就任し、日本最大級の技術系VC「リアルテックファンド」の代表も務める。