「CFOを募集。ただし、18歳以下」
この夏、ユーグレナ社は未来の地球と社会についてより真摯に考えた経営を実現するために、新しいポストを新設し一般募集を開始。

この「CFO」こと「Chief Future Officer」は、地球や社会の“未来”を考え、会社と社会をより良くしていく役割を担います。取り組みの背景やCFOへの期待、これからの展望について、経営学者であり、ユーグレナの社外取締役を務める琴坂将広氏と、当社副社長の永田暁彦が語り合いました。

イノベーションを期待させる「ワオ!」な挑戦に興奮

—“史上最年少の東証一部上場CFO(Chief Future Officer)募集”という今回の取り組みについて、第一印象はいかがでしたか?

琴坂将広さん(以下琴坂):一言で表すなら「ワオ!」と(笑) 。
職業柄、私はビジネスに関する構想や打ち手はたいがい把握していると自負していますが、今回の件は予想外で新鮮でした。数年ぶりに「これはイノベーションが起こるぞ!」と興奮しましたね。

永田暁彦(以下永田):構想段階では不安もあったんですよ。琴坂さんに相談したときも恐る恐る切り出したんですが、3秒で「いい!やろう!」って(笑)

琴坂さん

琴坂 将広 Masahiro Kotosaka(慶應義塾大学総合政策学部准教授/株式会社ユーグレナ社外取締役)
学生時代に、小売・ITの領域において3社を起業する。卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーの東京およびフランクフルトに在籍。北欧、西欧、中東、アジアの9カ国において多国籍企業の戦略策定に関わる。2008年に同社退職後、オックスフォード大学経営大学院に移籍、助手を勤めながら博士号(経営学)を取得、立命館大学を経て、2016年から現職。著書に『経営戦略原論』、『領域を超える経営学・グローバル経営の本質の知を系譜で読み解く』などがある。

琴坂:構想自体がイノベーティブなのはもちろん、それをユーグレナが行うことに大きな意義があると感じたんですよ。

永田:スタートアップだったらそこまで珍しくはないけれど…ということ?

琴坂:そう。東証一部上場企業になったユーグレナが意志決定した事実にこそ、大きなインパクトと価値があると思いました。

永田:確かに、常識的な枠を超えた意志決定だったかもしれません。しかし、我々は枠の中に収まることを目指してはいない。むしろ“いかに常識の枠を超えた挑戦ができるか”と考えています。特に未来の地球環境や社会を考えた時に、型破りでも挑戦すべきだと考えました。そういう意味では必然的に産声を上げた取り組みだったと考えています。

未来を紡ぐCFOが、企業と社会の結びつきに変革を起こす

—実際の反響として、想定以上の応募があったと聞いてます。

永田:500人以上もありました!これは、想像をはるかに超える数字でしたね。感覚的な計算ですが、自分が高校生なら絶対に応募しないし(笑)、1学年に1人いるかいないかくらいじゃないかな。仮に1,000人に1人が応募していただいたと考えて逆算すると、応募数が500人なので、CFO募集の情報自体は約50万人にリーチしたことになります。

琴坂:だからきっと、世の皆さんも「ワオ!」って言ったに違いない(笑)

永田:また、今回の募集を通して、応募者だけでなく、その周りの方の支援の大きさも感じました。今回の募集は18歳以下が対象ですので、応募には親御さんや教員の皆さんの支援が欠かせませんでした。応募者の周りで、支援していただいたみなさんの存在があってこそ、これだけの応募につながったのだと思います。

永田

永田 暁彦 Akihiko Nagata(株式会社ユーグレナ取締役副社長/リアルテックファンド代表)
慶応義塾大学商学部卒。独立系プライベートエクイティファンドに入社し、プライベート・エクイティ部門とコンサルティング部門に所属。2008年にユーグレナ社の取締役に就任し、ユーグレナ社の未上場期より事業戦略、M&A、資金調達、資本提携、広報・IR、管理部門を管轄。技術を支える戦略、ファイナンス分野に精通しユーグレナ社の財務、戦略およびバイオ燃料などの事業開発責任者を担当。現在は副社長に就任し、日本最大級の技術系VC「リアルテックファンド」の代表も務める。

琴坂:私たちの責任は重大ですよ、永田さん。CFOはきっと、私たちの常識の外側から屈託のない意見を出してくるでしょうし、私たちもそれを期待してもいる。その声を受け、ユーグレナの経営に反映しなければならないんですから。

永田:そうですね。だけど、CFOである彼・彼女らの声は「社会的意義を常に視野に入れた企業経営」の実現に向けて、最高の動機にもなります。

琴坂:最高の動機?

永田:例えば、私がある施策を「もっと社会的意義を高めるよう方針転換すべき」と考えているとします。だけど、売上や利益に責任を持つ立場として、声高に言えないこともある。しかし、CFOの意見ならば実施の必然性がありますし、説得力もぐっと増します。

琴坂:未来の主役、未来の当事者の意見を経営に反映するわけですからね。

永田:否定する理由がないでしょう? 未来を担うのが“CFO”なんですから。これは大変革だと思っています。

対談

覚悟を決めてくれたCFOとともに議論して意思決定していく

—現在(取材当時)、応募いただいた課題について審査が終わり、面談が進められています。まずは課題から感じた応募者の印象をお聞かせください。

永田:今回の課題は「 SDGsの17のゴールの中であなたが関心のあるものと、そのゴールを達成するためにあなたがユーグレナで取り組みたいことを教えてください」というものでしたが、 応募者のみなさんからは、実に興味深い問いをいただいていますね。

琴坂:CFOが就任したら、「甘えたこと言っている場合じゃない!」「早く動いてください!」って、私たちを怒鳴りつけてくるかもしれない。

永田:そんなやり取りが生まれれば、非常にすばらしいですよ。
個人的には、応募者の発想や思考より、10代の若さでここまでの覚悟を持てることに感銘を受けました。
自分が10代の頃を振り返ってみると、基本的には自分自身や自分の周りのが世界のすべてでした。しかし今回の応募者は、未来の社会を自分ごととして捉え、だから応募してきたわけです。それが他ならぬ覚悟だと思いました。

琴坂:なるほど。私自身で言えば、社会に対する見方って中学生くらいから変わらないんですよ。だけど、その頃は社会的な立場がなく、インパクトを生むための知見もなかった。だから社会人である今、大いなる可能性を秘めた彼・彼女らを支援したいし、ともに議論して意志決定していきたいです。

対談

永田:そう言われれば、私も発想や考え方は昔からあまり変わっていないかも。変化したのは“誰のため”にやるか。若い頃は自分のために考えたり行動していたりしていたのが、徐々に「社会に役立つか」「社会にインパクトを及ぼせるか」という観点に変化していきました。とはいえ、ずいぶん大人になってからのことですけどね。

琴坂:18歳以下の方と私たちの違いは、実際に社会の場で勝負しているか否かの一点のみだと思います。彼・彼女らには私たちにはない自由な発想やビジョン、パッションがあるはずなので、爆発の瞬間を待つマグマのような情熱で議論に加わってほしいと期待しています。

ストレスは変化の兆し。その先に描く理想とは

—では改めて、CFOとともに描きたい未来の展望をお聞かせください。

琴坂:CFOの考えを、私たちの経営と融合させ、社会にインパクトを生みたいですね。また、誰しもが未来に対し主体的に臨むリーダーでありつつ、ときにはフォロワーにもなり、みんながアクションを起こしていく、そんな社会を目指していきたいです。

永田:まずは、その考えや行動が評価され、社長の出雲充よりも有名になってほしいですね。そして、CFOとともに実施する社会へ向けたアクションが肯定され、それによって本当に何かが変化することを、みなさんにも目の当たりにしてほしい。 その過程を目撃する人が多いほど活動の意義は大きく、未来に対する人々の認識を変えることができると考えています。
また、ユーグレナで働く我々の“ストレス”にもなってほしいですね。大人たちが「10代の子はかわいいことを言うなぁ」なんて思っているうちは、真の変化は起こりえませんから。

琴坂:「よくわからないなぁ」と戸惑いつつも、「でも、いいなぁ」と感じられるCFOに出会いたいですね。

永田:そうそう。僕たちが「うるせぇなぁ!」と感じるくらいのストレスが生まれてこそ、活動の本質に近づいていく。CFOと真摯に議論を交わし、ぶつかり合いながら未来に変化を生み出していきたいです。

琴坂、永田

※文章中敬称略

構成:黒田あき/撮影:坂脇卓也/編集:大島悠