多様なバックグラウンドを持つ人材が、1つの目標に向かって強い一体感で結ばれている。
その理想の状態をつくり、維持するのは簡単なことではありません。

行動指針として「多様性を楽しむ」を掲げているユーグレナ社。
前回に引き続き取締役副社長の永田暁彦が、チームにおける多様性と一体感のバランス、ユーグレナ社の「大きな目標」などについて語ります。

多様性が、会社をもっともっと遠くまで連れていく

―ユーグレナ社には「多様性を楽しむ」という行動指針がありますね。

永田:「ユーグリズム」という10の行動指針があり、その1つ目に「多様性を楽しむ」を掲げています。その宣言どおり実に多様な人材が在籍しており、経営陣が「右向け右」で号令をかけてもそれだけではなかなか動きません(笑)。

でも、それ自体はポジティブに捉えています。
「右向け右」だけで動かないのは、それを正しいと思わないメンバーがいるから。つまり、別の答えがある可能性を示しているわけです。経験や能力、知識は、人それぞれ違っています。その違いをポジティブに活用するのが経営陣に問われていることだと思います。

―多様性を尊重することで、多くの可能性を視野にいれることができるわけですね。

永田:もちろん、程度はあります。たとえば、経営方針として「来年はアメリカ進出を目指す」と決めたのに、「私は中国に行きたいので中国に進出します」と言い始めるメンバーがいたら足並みが揃いませんから。しかし、目指すべき大きな目標を共有したうえで多様性を尊重し、「別の答えがある可能性」を視野にいれておくことは重要です。

そして、多様性の尊重とともに、この「大きな目標の共有」ということも、ものすごく重要なポイントです。大きな目標を共有できていると、その人とはより遠くまで歩むことができます。

―「遠くまで歩むことができる」とはどういうことでしょうか?

永田:例えば、1m先の的と1km先の的を狙うのと、どちらが難しいでしょうか?前者は手元が多少狂っても的に当たるかもしれませんが、後者の場合は、ほんのわずかな手元の狂いで的には当たらなくなってしまいます。

これと同じことが経営にも当てはまると思っています。会社としてより遠くへ、つまり大きな目標を達成しようと思ったら、その目標をメンバーがしっかり共有している必要があります。

2019年4月全社会議のようす

大きな目標は、ズバリ「人と地球を健康にする」こと

―ユーグレナ社の「大きな目標」とは何ですか?

永田:過去には、株式上場や売上100億円達成などの目標がありましたが、これらの目標は中間地点。ユーグレナ社にとって、山に登り始めたぐらいの意味合いでした。

多くの人が大きな目標だと指摘するミドリムシを原料の一部に使用したバイオ燃料の製造や、それで飛行機を飛ばすといったことでさえ、私たちにとってはまだまだ二合目程度。
ではユーグレナ社の「大きな目標」は何かというと、経営理念に掲げる「人と地球を健康にする」ということです。ヘルスケア事業やバイオ燃料事業などさまざまな事業を展開していますが、この経営理念はメンバーみんなが共有している必要があると思います。

―「人と地球を健康にする」というのは確かに大きな目標ですね。

永田:そうですね。今、大きな目標に向かってそれぞれのメンバーが取り組んでいます。人と地球の健康をおびやかす課題はたくさんありますが、その中で大きな課題の1つと考えているのが、化石燃料の使用による二酸化炭素の排出量増加に伴う気候変動リスクです。

この課題に対しては、ミドリムシを原料の一部に使用したバイオ燃料の製造に取り組んでいます。ミドリムシは、成長時に光合成により二酸化炭素を吸収します。ミドリムシ由来の燃料も燃焼時に二酸化炭素を排出しますが、この二酸化炭素は成長時に吸収したものと考えることができるので、化石燃料からミドリムシ由来の燃料に切り替えていけば、二酸化炭素排出量の増加を抑制することができます。

他の植物も光合成で成長するため同様の効果が期待できますが、一般的に植物の栽培には広大な農地が必要です。ミドリムシは他の植物と比べて、面積当たりの培養効率が高いと言われていて、二酸化炭素排出量を抑制する燃料として大きなポテンシャルがあると考えています。昨年10月には横浜にバイオ燃料製造実証プラントが完成し、現在バイオ燃料実用化普及に積極的に取り組んでいます。

一緒に働きたいのは誰かのために何かをできる「いい人」

―大きな目標を実現するために具体的にどのようなことに取り組んでいますか?

永田:重要なのは「人」です。特に、ベンチャー企業にとっては、どのような人にメンバーになってもらうかということが大きなポイントになってきます。

ユーグレナ社では当初、「人と地球を健康にする」という会社の大きな目標への共感、共有を重要な採用基準の1つにしていました。しかし、会社の規模が大きくなるにつれて、さまざまなスキルを持った人が必要となり、その採用方針では人を採用するのが難しくなりました。そこである時期から、大きな目標の共有重視の採用から、「いい人」かつスキルがある人を積極的に採用する方針へと切り替えました。

―「いい人」とは具体的にどのような人のことでしょうか?

永田:利他の精神を持つ人のことです。
利他の精神を持つ人は、みなそれぞれ原体験があり、自分以外の誰かのためにがんばるという価値観を持っています。その対象が貧困撲滅かもしれないし、戦争反対かもしれない。その違いは大して重要ではありません。利他の精神を持つ人であれば、一緒に働く中で「なぜ僕らが『人と地球を健康に』したいのか」を話し続けたら、ユーグレナ社の「人と地球を健康にする」という目標を共有できるはずです。

反対に、めちゃくちゃできる人でも、利己的で自分の手柄や利益にしか興味がない人に、当社の理念に共感してもらうことはまず無理でしょう。そもそも、私が単純に人間の好き嫌いが激しいだけだからかもしれませんが、そういう人と一緒に働きたいとは思えない、というのも事実です(笑)。

多様な「いい人」たちとしっかりとコミュニケーションを取り、会社として「大きな目標」を共有する。多様性の尊重と大きな目標の共有、どちらも大切にして、「大きなチーム」を作ることを目指しています。

文:萱原 正嗣

株式会社ユーグレナ 取締役副社長/リアルテックファンド 代表
永田 暁彦(ながた あきひこ) 

慶応義塾大学商学部卒。独立系プライベートエクイティファンドに入社し、プライベート・エクイティ部門とコンサルティング部門に所属。
2008年にユーグレナ社の取締役に就任し、ユーグレナ社の未上場期より事業戦略、M&A、資金調達、資本提携、広報・IR、管理部門を管轄。技術を支える戦略、ファイナンス分野に精通しユーグレナ社の財務、戦略およびバイオ燃料などの事業開発責任者を担当。現在は副社長に就任し、日本最大級の技術系VC「リアルテックファンド」の代表も務める。

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