2005年8月、ユーグレナ社は3人の創業メンバーのよって産声を上げました。同年12月にはミドリムシの屋外大量培養を世界で初めて成功させ、現在、食料や化粧品、バイオ燃料など事業領域を拡大しています。会社の規模も大きくなり、いまやグループで400名を超えるメンバーが在籍しています。

会社が成長を続けるなか、経営のあり方も変わってきました。取締役副社長の永田暁彦が「チーム」と「組織」の違い、会社経営のあり方について語ります。

「チーム」には、同じ志と精神的平等性がある

―永田さんは2008年からユーグレナ社の経営に携わっています。そのときと今を比べて、経営面で大きく変わった点を教えてください。

永田:会社が「チーム」から「組織」へ変わってきたように思います。「チーム」と「組織」の違い。それには集団の規模が大きく関わっていると思います。

2008年に社外取締役としてユーグレナ社に関わり始めたときは、まだ数十人の小さな会社でした。メンバー1人ひとりと業務を通じて密に関わり、お互いの人物像がはっきりと見える。メンバー間で日常的にコミュニケーションが起こる関係性にありました。このように、人間関係が濃密な、あるいは人的解像度の高い関係性にある状態が「チーム」と言えます。

別の言い方をすると、「チーム」というのは同じ志を持った、精神的平等性が高い集団です。野球やサッカー、ラグビーなどスポーツの「チーム」がそのイメージにぴったりです。

フラットな関係にある選手一人ひとりが、勝利という目標に向かって最適な行動を選択する。それが「いいチーム」です。選手のなかに、チームの勝利はそっちのけで自分の成績だけにこだわる人がいれば、チームとしてのまとまりを欠き、勝利を手にすることは難しくなるでしょう。

―「チーム」をまとめるのに大切なことは何でしょうか?

永田:濃密なコミュニケーションによって、メンバーが自発的に同じ方向に進めるようにすることではないでしょうか。当社でも会社を「チーム」と捉えて経営していたフェーズがありました。


「組織」だからこそできること

―「チーム」のフェーズから「組織」のフェーズに変わったということですか?

永田:そうです。集団の規模が大きくなると、同じ集団内であっても日常的に関わる人間関係に偏りが生じます。集団のメンバー全員を、同じ人的解像度で見ることは現実的に難しくなります。同じ部署の人、あるいは物理的に席が近い人とは日常的にコミュニケーションが起きるでしょうが、そうでない人との人間関係はどうしても遠くなってしまいます。
そうなってきたときに、集団は「チーム」から「組織」へと変わる。というよりもむしろ、経営する立場にいる人間が、「チーム」から「組織」へと意識を変える必要があるのだと思います。

―経営のやり方は具体的にどのように変わりましたか?

永田:会社を「チーム」として経営していたときは、メンバー全員が100%同じ理念のもとに、行動することを求めていました。日々のコミュニケーションにおいては、「一を聞いて十を知る」。メンバーにはそうしたことを求めていましたし、そうなるように関係性を構築していました。

ところが会社の規模が大きくなるにつれ、この感覚を全員に対して期待するのは現実的ではなくなってきました。メンバーの数が多くなると、会社の理念や目標を、全員がまったく同じ強さで共有することは困難です。会社の理念や目標に共感していないメンバーが、社内に一定数いるかもしれない。
そういうドライな前提に立ち、それでも会社が目指すべきゴールに到達できるようにさまざまな方策を考える。それが「組織」の経営だと思います。

―「チーム」では限界があったということでしょうか。

永田:そうですね。大きな目標を達成するためには、適切な規模の集団をつくる必要があると思います。線を引くのは難しいですが、400人を超えるメンバーと濃密なコミュニケーションを継続するのは難しいですよね。

また、多様な価値観やスキルを持ったメンバーが多数集まり、さまざまな選択肢の可能性を検討することも重要になってきます。

「組織」から「大きなチーム」を目指したい

―なるほど、ユーグレナ社は「チーム」から「組織」へと変化してきたということですが、今後どのような集団を目指しますか?

永田:「組織」を「チーム」のように経営できないかと考えています。400人規模の集団は、「組織」として捉えて経営するのが現実的だと思いつつ、「チーム」のように濃密な関係性を築くことができれば、会社はもっと強くなれるはずだと考えています。

そのために、試行錯誤しながらさまざまな取り組みを始めています。たとえば、2018年の本社移転の際に、オフィスの一部をカフェスペースにしました。部署をまたいだコミュニケーションが生まれ、固定化しつつあった人間関係に流動性が生まれているのを感じています。

また、毎週異なるメンバーで昼食をとるランチ会も開いています。入社1年目の社員からすると、社長の出雲や副社長の私は、距離が遠く話しかけづらい存在になっているかもしれません。その距離感をなくすことが目的の1つです。

今は、こうした取り組みを通じて、会社が「大きなチーム」のようになっていくことを目指しています。

~後編に続く~

文:萱原 正嗣

株式会社ユーグレナ 取締役副社長/リアルテックファンド 代表
永田 暁彦(ながた あきひこ)

慶応義塾大学商学部卒。独立系プライベートエクイティファンドに入社し、プライベート・エクイティ部門とコンサルティング部門に所属。
2008年にユーグレナ社の取締役に就任し、ユーグレナ社の未上場期より事業戦略、M&A、資金調達、資本提携、広報・IR、管理部門を管轄。技術を支える戦略、ファイナンス分野に精通しユーグレナ社の財務、戦略およびバイオ燃料などの事業開発責任者を担当。現在は副社長に就任し、日本最大級の技術系VC「リアルテックファンド」の代表も務める。