CO₂がもたらす気候変動は、人類の未来に大きなリスクをもたらす。この未来に対し、人類に今できることは何か――。

ユーグレナ社のミッションは、バイオジェット燃料の開発によってこの未来を変える起爆剤となること。そして会社のあり方を変えること。取締役副社長の永田暁彦が語る、未来へのメッセージをお届けします。
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気候変動リスクは忘れた頃に大“人災”をもたらす

CO₂の増加がもたらす地球の「気候変動リスク」と聞いて、私たちが被る身近なリスクとして、何を想像するでしょう? たとえば過度に暑くなったり、寒くなったりして、住みにくくなるというリスクが身近かもしれません。しかし人類が直面する、もっとも大きく、そして多くの人が避けることのできない気候変動リスクは戦争なのです。


歴史の中で繰り広げられてきた人類の戦争の多くはエネルギーと食料の奪い合いであり、言い換えれば「農地の獲り合い」です。
農地とは「植物が耕すことができる地面」。気候変動によってこの地球上の農地の面積が大きく減少する可能性があります。たとえば地球温暖化で海面上昇が起きれば、相対的に農地がある陸地が減少します。気候変動により砂漠化が加速すれば、農地として使うことのできる場所が減少します。こうした状況下で、世界中で戦争が勃発すれば、救いようのない問題になります。

気候変動は、非常にゆっくりと広範囲で進行します。よって私たちがその変化を実感するときには、すでに取り返しのつかない影響をこの地球にもたらしており、膨大なリスクを人類に与えているのです。

そうした未来を変えるために、私たちは今、連想を重ねる必要がある。
身近な気温の変化などは、極論すれば海に飛び込むなり、厚着をすれば済むかもしれない。考えて行動すべきは、世界中で勃発する戦争に対して今、何ができるのかです。

ミドリムシは、その培養に農地を必要とせず、人類には栄養源として、テクノロジーにはバイオジェット燃料としてエネルギーを供給することができる。企業体であるユーグレナ社は、私たちが地球の未来に対し連想し、起こしている行動そのものなのです。


私はこうした未来の危機について考える時、フロンガスによって破壊されたオゾン層の穴「オゾンホール」を、ひとつの希望として思い起こします。 あの小学校の教科書に載っていたオゾンホールが今、どうなっているか知っていますか? 少しずつですが、塞がってきているのです。

世界中の人々が、それぞれに小さな意識を傾けて行動したことで、地球規模の巨大な問題を未然に防ぐことができた。人類というのは、この地球を破壊することもできれば、回復させることもできる、すごい力を持っているのです。

ミドリムシは、未来を変える起爆剤

2018年10月31日、バイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの完成と同時に、私たちは『GREEN OIL JAPAN(グリーンオイルジャパン)』宣言を行いました。これは「日本をバイオ燃料先進国にする」ことを宣言したものです。

2018年11月2日、協力各社と実証プラントで「GREEN OIL JAPAN」宣言をした


この宣言の真意は、私たちの力だけでジェット燃料すべてを、100%ミドリムシによるバイオジェット燃料に変えてしまうことではありません。私たちは「起爆剤」になりたいのです。
世界中のエネルギー産業が、地球の未来を考えて「これからはバイオジェット燃料だ!」と大きな方向転換を決断することができるような気付きを与えたい。ミドリムシで起業した日本のベンチャー企業が起こしたものは小さなきっかけでいい。それが結果的に、世界を変える衝撃になってくれればいい。そんな思いを、この宣言に込めました。

そして私たちユーグレナ社は、バイオジェット燃料事業を通し、今の地球上には無い会社になりたい。それは「企業として成長するほど、社会が良くなる」という会社です。ユーグレナ社という企業は、ある意味では民主主義の面白い形を体現しています。

これまでの経済では、株式会社というのものは利益を株主に還元することがその主たる役割でした。しかしユーグレナはそうした役割も果たしながら、株主個人の未来への希望を、この社会で実現するための役割を果たしてくることができた。
ある株主の言葉ですが、「孫に『じいちゃんはあの頃からユーグレナの株持ってんだ』ということが自慢できる会社になってほしい」と言うのです。これは経済における株式会社の新しい関わり方を生み出したということでもあると思っています。

私たちは、未来を生きる子どもたちに、希望のある地球を残していきたい。この世界はより良い世界になれるはずだと、多くの人が信じ、行動できるような地球を。


文:森 旭彦

株式会社ユーグレナ 取締役副社長/リアルテックファンド 代表
永田 暁彦(ながた あきひこ)


慶応義塾大学商学部卒。独立系プライベートエクイティファンドに入社し、プライベート・エクイティ部門とコンサルティング部門に所属。
2008年にユーグレナ社の取締役に就任し、ユーグレナ社の未上場期より事業戦略、M&A、資金調達、資本提携、広報・IR、管理部門を管轄。技術を支える戦略、ファイナンス分野に精通しユーグレナ社の財務、戦略およびバイオ燃料などの事業開発責任者を担当。現在は副社長に就任し、日本最大級の技術系VC「リアルテックファンド」の代表も務める。